政府が閣議決定した2025年度一般会計当初予算案は115兆円を超えて過去最高となりました。今年は日銀が17年ぶりに利上げをしたため、国債の利払い費を抑えるために財政規律をこれまで以上に重視する必要があります。しかし、自民党が少数与党となり、与野党が来年の参院選に向けた「実績」を作ろうとする中で予算額は膨張しました。このままだとどうなるのか、日本総研の河村小百合さんに聞きました。(白山泉、高田みのり)

◆国の借金は一向に減らない

政府予算の財政規律の重要性を強調する日本総研の河村小百合さん

 ──25年度の予算編成をどう見ますか?  財政再建に向けて今年は大事な年でしたが、規律のある財政運営ができていません。予算は前年比で増額となり、利払い費も増加しています。日銀の利上げにより金利の上昇局面に入ったのだから、基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化させて、財政収支を均衡させなければ国の借金は一向に減りません。  背景には、政治家がお金をばらまかなければ来年の選挙に勝てないと思っていることがあるでしょう。税制改正の議論でも、国民民主が財源なしに大規模な減税を求めても、自公政権が財政再建の目標を堅持していれば、はね返すことができたはずです。しかし、石破政権自身、緊急性があるのかどうか分からない13兆円もの補正予算を財源なしに赤字国債を使って組んだことで財政規律を掲げた反論ができなくなってしまいました。  資本主義の先進国なのに将来の財政の持続性に責任を持つ政党がないのが残念です。心の中ではおかしいと思っている人が多いのではないでしょうか。  ──地方創生交付金も増額されました。  地方財政も人口が減っているのだから、地方財政制度のやり方を変えていかないといけないのに、議論が起きない。財政再建の議論はおしりに火が付かなければ始まらないので、長期金利が大事なんです。アベノミクスの金融緩和の負の遺産は、金利の市場メカニズムをつぶして、国家財政への警鐘が鳴らないようにしたということでしょう。

◆イギリスでは「この国の財政は危ない」との懸念が強まり…

 ──英国では2022年に誕生したトラス政権が財源の裏打ちのない政策を打ち出しました。

政府予算の財政規律の重要性を強調する日本総研の河村小百合さん

 減税はするけれど財源はないという政策「ミニ・バジェット」に対して、投資家の間に「この国の財政は危ない」との懸念が強まり、国債が売られて金利が急騰しました。株価や通貨も下落しました。利払いが増えて財政が回らないということで、トラス首相は大幅な方針転換を迫られ、退陣しました。  ──日本でも同じことが起きますか。

 日本は同じ経路はたどらないでしょう。中央銀行の日銀がイングランド銀行(BOE)と比較にならないくらいの...

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