米連邦準備理事会(FRB)が政策金利の追加の引き下げを決めるとともに、2025年は利下げのペースを緩やかにする意向を示した。一方の日銀は追加の利上げの見送りを決定した。
内容は異なるが、25年1月発足のトランプ次期米政権の政策を見極めようとする姿勢は共通する。政策判断の巧拙は世界経済を左右する。周到な対応を期待したい。
FRBは18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の幅で利下げし、4.25〜4.50%とした。9月から3会合連続で、下げ幅は計1.0%に達した。
25年の利下げ見通しは0.5%(2回)で9月の前回見通しの4回から半減させた。
米景気が好調を保つなか、経済に適切な金利水準(中立金利)も切り上がり、急いで政策金利を下げる必要は薄れている。パウエルFRB議長は記者会見で「中立金利にかなり近づいた」として「新しい段階に入った」と表明した。
インフレ予想は目標の2%への収束が27年へと1年ほど遅れる姿となった。トランプ氏の高関税政策を織り込む動きがあった。パウエル氏は「政策の不確実性」にも言及し、「今後の経路が不確かなら、ややゆっくりと進むのが常識的な考え方」と語った。
政策次第で市場が不安定になるリスクもある。トランプ氏がFRBの独立性を軽視しがちなのも気がかりだ。FRBは自主的な判断を貫きつつ政治への対応や市場との意思疎通を万全にしてほしい。
新政権の高関税政策は日本にも大きなリスクだ。日本だけでなく、貿易相手国との報復合戦に陥れば、世界経済を下押しする。
日銀は19日の金融政策決定会合で政策金利を現状の0.25%で維持すると決めた。賃上げや企業の価格転嫁が来年以降も続くのかを見極めるためだ。
植田和男総裁は会見で「次の利上げの判断に至るには、もうワンノッチ(1段階)ほしいな、というところ」と表明した。
見極めたい要因として来年の春季労使交渉の動向に加え、トランプ氏の政策を「米国の経済・物価動向に影響を及ぼす可能性だけでなく、世界経済や市場にも大きな影響を及ぼしうる」と語った。
だが、息の長い成長を果たす意味でも、経済の実力に合わせた金融政策の正常化は必要だ。市場との対話を丁寧に重ねつつ、適切な政策運営に結びつけてほしい。
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