札幌市と日本経済新聞社、テレビ北海道が開いた「NIKKEI FORUM グローバルGX・金融会議札幌」は17日、2日間の会期を終えた。2日目は水素やアンモニアなど、次世代エネルギーの製造を目指す企業の幹部などが討論を交わした。パネル討論で出光興産の沢正彦副社長は「国内外に合成燃料の供給網を構築したい」と語った。
「CCUSの未来―脱炭素に向けた電力・石油会社の挑戦」と題したパネル討論に登壇した。出光は二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)のほか、CO2の活用も含むCCUSの構想が進む北海道苫小牧市で、再生可能エネルギー由来の水素製造拠点を設ける計画を掲げる。苫小牧でつくった水素と回収したCO2で合成燃料の製造も視野に入れる。
「再生エネの価格競争力がある海外でも、合成燃料のもととなる『合成メタノール』をつくる」とも語った。2024年には合成メタノールの事業化を目指す米HIF Global(ヒフグローバル)に出資している。
水素製造拠点の計画に出光とともに名を連ねるENEOSホールディングス(HD)や北海道電力の幹部も討論に参加した。ENEOSHDの藤山優一郎常務執行役員は「今はまだ国内の再生エネは高い。エネルギー安全保障の観点ではできるだけ国内で合成燃料を製造したいが、再生エネの普及やコストによるところがある」と指摘した。
北海道電力の斎藤晋社長は出力が不安定な再生エネの導入が今後増えるなかで「調整力としてバックアップ設備が必要で、そのひとつが火力発電だ」と述べた。北電は石炭火力発電の苫東厚真火力発電所(北海道厚真町)を主力電源の一つとしている。斎藤氏は脱炭素に向けた対応として「アンモニア混焼やCCSを活用しながら電力供給側のゼロカーボンを目指していく」との考えを示した。
別のパネル討論に登壇した会沢高圧コンクリート(苫小牧市)の会沢祥弘社長は、同社が製造を目指す浮体式洋上風力発電とアンモニア生産装置を組み合わせた設備について「安全保障上重要で、新たなインフラとして捉えるべき技術だ」と訴えた。
次世代エネルギーの技術開発や実装には多額の投資資金が欠かせない。大手金融機関の関係者が登壇したパネル討論では、日本政策投資銀行の原田文代常務執行役員が「水素をためるなど、実際にリスクを取る事業者が複数必要になる」と指摘した。
三菱UFJ銀行の大嶋幸一郎常務執行役員は「(政府の金融・資産運用)特区において規制緩和や税制優遇を最大限行い、事業者を招き入れることが重要だ」と強調。三井住友フィナンシャルグループの高梨雅之執行役員は「金融機関は黒子で、事業会社が引っ張っていけるようにすることが重要だ。地域が連携して多様なステークホルダーを巻き込んでいかなければ」と呼びかけた。
みずほ銀行の桜木伸生常務執行役員は再生エネ活用の意義を説く一方、「持続可能であるためには地元にお金が落ちるという経済価値との両立が課題だ」とした。
「デジタルトランスフォーメーション(DX)はGXを進める上でのチャンスとなる」。こう語ったのはジャヒ・ワイズ元米大統領特別補佐官だ。生成AI(人工知能)などの普及はデータ処理量を急増させ、電力需要を高める要因となる。米国のエヴァン・フェルシング駐日経済・科学担当公使は「電力需要の拡大に対応するには洋上風力や太陽光、地熱発電だけでなく、原子力発電の活用も重要だ」と強調した。
英NGO、認証制度づくりに助言
グリーンボンド(環境債)市場の発展を促すための英国の非政府組織(NGO)、クライメート・ボンド・イニシアチブ(CBI)と札幌市、北海道の3者は、GX推進と地方創生に関する共同声明を発表した。声明には、CBIが北海道・札幌市に金融機能を拡大するために必要なノウハウを提供することなどを盛り込んだ。
具体的な支援として、道や市などから構成する産学官金連携のコンソーシアム「チーム札幌・北海道」が創設する認証制度への助言などを想定する。CBIのショーン・キドニー最高経営責任者(CEO)は認証制度について「世界が設ける基準と同じレベルになる必要がある」と指摘した。国内の自治体と共同声明を出すのは今回が初めて。
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