創業から100年以上を数える中小企業は、数々のピンチをどう乗り越え、チャンスに変えてきたのか。そうした経験、ノウハウを共有する「西武100年企業の会」(東京新聞協力)の納会が今月3日、東京都新宿区のホテルで開かれた。主催する西武信用金庫(中野区)の取引先で、同会会員の57社が参加した。

◆試練に立ち向かう勇気、スキル「伝授して」

 同会は2023年6月に発足した。当初は55社で開始し、本年内に創業100年の節目を迎える中小企業も加わって会員数は76社になった。

納会で挨拶する高橋一朗・西武信金理事長

 西武信金の高橋一朗理事長は、人口減少に伴う事業環境の変化を挙げて「皆さまが長年培われてきた変化に対応する、試練に立ち向かっていく勇気やスキル、経験が生きる時代がいよいよ来るのではないか」と説明。次の100年企業を育むヒントとして「後に続く企業にも伝授していただきたい」と呼びかけた。  続いて開かれたパネルディスカッションには会員のうち3社が登壇。「変革期を乗り越えた100年、次の100年に向けて」と題して意見を交換した。

◆少子化という「危機」、ニーズの変化に活路

 中野区にある「東亜学園高等学校」は、1924(大正13)年の創立から今年でちょうど100年。第8代理事長の矢野隆さんは、少子化を「私どもにとって大変に危機的な状況」と説明する一方、夫婦共働きで世帯年収が高い「パワーカップル」などの増加に活路を見いだしている。  「質の高い、一人ひとりに合った教育が求められていくだろう。中学部門もつくって、中高一貫教育に早くシフトしなきゃいけないと思っている」と述べた。

創業100年以上の中小企業57社が参加した「西武100年企業の会」納会=いずれも新宿区で(西武信金提供)

 建築資材販売の「東京木工所」(渋谷区)も今年、創業100年の節目を迎えた。3代目の栗原能子(よしこ)社長は「建築資材を売る入り口から、使い終わった廃木材を引き受けてリサイクルする出口までできる会社へと進めている」と語った。  木の素晴らしさをどう「見える化」するか──。それが次の100年へと歩みを進める鍵になるとみている。「業界そのものがシュリンク(縮小)していく中で、どんな付加価値を私たちが発信できるのか。サプライチェーン(供給網)の中で連携し、より大きな可能性を示すチャンスかもしれない」

◆「地域と一緒に」老舗金物店が貫く信念

 町田市で建築金物や工具を販売する「平野屋金物店」は1883(明治16)年の創業から141年。4代目の平本勝哉会長は「くぎ数本とか、売り上げにすると10円、20円というお客さんもいる。地域に貢献し、地域と一緒に発展していく形で商売を続けてきた」と振り返った。  主な顧客である職人の高齢化や、ホームセンターとの競合は大きな脅威だ。防災や介護の関連用品を強化し「お客さまに喜ばれることに喜びを感じながら、提案型の商売を考えていく」と述べ、地域密着を貫く決意を口にした。

100年企業のうち都内の3社が登壇し、これまでの歩みや次代にバトンをつなぐ決意を語ったパネルディスカッション(西武信金提供)

 100年企業のかじ取りを担う3人の発言を踏まえて、経済産業省の佐合(さごう)達矢・関東経済産業局長は「たとえば人口減少や少子高齢化は客観的な事実であって、必ずしもマイナスばかりではない。その変化をどうとらえるか、ということだ」とコメントした。  「売り上げとか利益の成長も大事だが、事業の継続ということじたいに非常に大きな価値があると思う。後に続く経営者に対するお手本となって頑張っていただきたいし、行政にできることがあればサポートしたい」とエールを送った。(石川修巳)

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