日銀仙台支店が13日発表した企業短期経済観測調査(短観)によると、東北6県の12月の景況感を示す業況判断指数(DI)は全産業でプラス5と前回調査(9月)に比べ2ポイント上昇した。改善は3期連続で、新型コロナウイルス禍前の2019年3月以来の水準となった。自動車の認証不正問題の解消や価格転嫁の進展などが寄与した。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いて算出する。12月調査の回答期間は11月11日〜12月12日で、644社が回答した。
製造業はマイナス3で、前回調査より2ポイント上昇した。14業種中7業種が改善した。幅広い業種で価格転嫁が進んだほか、トヨタ自動車東日本の認証不正問題が解消し、生産が再開した効果が表れた。
輸送用機械はプラスに転じ、前回プラス11だった金属製品も設備投資の増加でプラス22に伸びた。
トヨタ東日本では「ヤリスクロス」など3車種の生産が再開して3カ月が経過した。「1台でも早く顧客に車を届けようと日夜努力している」(トヨタ東日本)としており、停止した約3カ月の遅れを取り戻そうと挽回生産に取り組み始めている。
非製造業はプラス11で、前回調査から3ポイント上昇した。12業種中6業種で改善し、17年12月の調査以来の水準となった。
運輸・郵便で価格転嫁が進んだことや、対個人サービス、宿泊・飲食サービスなどの年末商戦による需要増が追い風となった。
冬のボーナスの増加が見込まれることや年末年始が9連休となることから、仙台市内ではお歳暮商戦が活発になっている。百貨店の藤崎(仙台市)では高単価の鍋などで「プチぜいたく」の需要を取り込んだ商品の売れ行きが好調という。
藤崎の担当者は「新型コロナウイルスが23年に5類に移行してから、家族や大人数で食卓を囲む機会が増加しているようだ。家族や自分用のご褒美として需要が年末に向けて旺盛だ」と話している。
日銀仙台支店の岡山和裕支店長は13日の記者会見で「東北はサービスの回復効果が大きかった。製造業・非製造業ともに価格転嫁が進んだことも大きい」と説明した。
3カ月先の見通しを示す先行きDIは製造業がマイナス6と3ポイント悪化し、非製造業はプラス3と8ポイント悪化を見込む。
業種別では、輸送用機械がプラス22と14ポイントの大幅改善を見込んでいる。自動車メーカーの挽回生産への期待が高まっており、関連業種への波及効果も期待される。
12月短観では企業収益の改善も目立った。24年度の経常利益(計画)は全産業で前年度比30%増と、9月調査時点から上方修正された。売上高も小幅に上方修正され、前年度比5%増となった。
製造業では半導体関連設備の生産持ち直しや自動車の挽回生産、円安などが寄与した。非製造業も上方修正しているが、仕入れ費用や人件費の高騰で依然として減益が見込まれている。
収益改善は堅調な設備投資(土地投資を含む)につながる。24年度の計画は全産業で15%増と前回調査から上方修正された。人手不足や長時間労働への規制が強化された「24年問題」に対応した省力化投資などが背景にある。岡山支店長は「堅調な設備投資は景気回復の重要なエンジン」と話している。
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