29日の外国為替市場は、約34年ぶりに一時1ドル=160円台まで円安が進んだ。その後154円台に戻すなど乱高下する場面があり、政府による円買いドル売りの為替介入が行われたとの見方が金融市場で広がった。だが、円急落の背景には好調な米国経済や日本の低金利があり、長期の物価高に苦しむ家計への懸念は簡単に払拭されそうにない。

◆背景に日米経済格差

アメリカドル紙幣

 円安が加速すれば、輸入物価の上昇を通じて実質賃金の低迷が長引くおそれが生じる。今春闘での賃上げの流れを吹き飛ばしかねず、家計への打撃は深まるばかりだ。しかし今の円安にはさまざまな要因が絡んでおり、政府が為替介入をしたとしても、その場しのぎになりかねない。  最大の要因は米国経済の底堅さだ。連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを行うとの見方は遠のき、今後も金利の高いドルを買う動きが収まる気配はない。かたや、日銀は26日の金融政策決定会合で金融緩和の維持を決定。市場では日銀が円安を容認しているとも受け止められ、同日の植田和男総裁の会見中から円安が加速していた。

◆「1ドル=120~130円台が良い水準」

 今年から開始された新少額投資非課税制度(NISA)で、米国株連動の投資信託が多く買われていることもドル高円安の一因とされる。三菱UFJ信託銀行資金為替部の岡田佑介氏は「円高になっても米国投資でドルを買おうとする人が多い」とし、ドル高に伴う円安が進みやすい構図を指摘する。  円安の影響と今後について、SMBC日興証券の牧野潤一氏は「円安になれば、日本の安い半導体がよく売れるようになるが、家計は苦しくなる。そのバランスを考えると、1ドル=120~130円台が良い水準だろう」と話す。(白山泉) 

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