日本経済新聞社と日本経済研究センターは11日、大阪市内で景気討論会を開いた。足元の世界経済は堅調に推移する一方、トランプ次期米大統領による政策や中国の景気減速などリスク要因も多い。人手不足の克服や経済成長に向けて、大胆な規制緩和が必要との声が目立った。
――足元の景気動向をどう見ていますか。
長谷川氏 今夏は猛暑や南海トラフ地震への警戒などで鉄道利用が落ち込んだが、10月以降は観光客が回復している。こだわり消費という価値があると判断したものへの消費は増えた。11月の商業施設のテナント売上高は2019年比20%増だ。基礎的な消費は倹約しているが全体として個人消費には悲観していない。
西原氏 世界経済は底堅い。けん引しているのは米国だ。米連邦準備理事会(FRB)は利下げを進め、雇用統計も良好だった。1年前は米経済がこれほど良くなるとは思っておらず、日本やユーロ圏と比べても米国一人勝ちの状況だ。
――経済の先行きをどう見ますか。
広江氏 海外のリソースをどう活用するかは経営課題のひとつだ。(貿易などの)米中対立を踏まえると、中国でのリソース活用はリスクが伴う。今後は中国だけではなく「中国プラスワン」という考え方のもと、インドやマレーシアに注目している。
岩田氏 FRBの利下げペースは思ったよりも緩やかになるのではないか。短期的にはドル高・円安傾向が続く。起業家のイーロン・マスク氏らが主導する歳出削減と金融政策のやり方次第で状況は変わる。日銀については、私は(政策金利は)0.25%で十分と思っているが、利上げに動けばドル安・円高に働く。
――政府に対して求めることは何ですか。
長谷川氏 働き手不足が続いており、外国人材の活用は調和のある形で進めていくことを考えてもらいたい。鉄道は最大の規制業種のひとつで、運賃を簡単に上げることができない。コストプッシュは厳しくなっており、もう少し規制緩和を進めてもらいたい。
広江氏 半導体関連の助成の継続を願う。北海道で半導体工場が建設中だが、まだ初期段階。製品が流れて初めて日本企業に恩恵がある。トランプ氏の登場で脱炭素の流れが転換してしまうことを懸念しており、水素を中心としたエネルギー政策への取り組みも継続してもらいたい。
――24、25年度の日本の実質経済成長率と、25年末の対ドルの円相場、日経平均株価は。
西原氏 24年度の成長率はマイナス0.3%、25年度は1.2%とみている。円相場は1ドル=148円で、株価は4万3000円。株価については、日本は世界でも最も上昇する数字でみている。
岩田氏 実質成長率は24年度は0.4%、25年度は1.1%とみる。ただ、トランプ氏による政策が明らかではなく、その点を織り込み切れていない。円相場は1ドル=140円、株価は3万9000円だ。株価は堅めにみておりパフォーマンスは悪くないだろう。
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