東北6県に本店を置く地方銀行15行の2024年4〜9月期決算(単体)が出そろった。プロクレアホールディングス(HD)傘下で、25年1月に合併する青森銀行とみちのく銀行の2行合算分とその他7行のあわせて9行で最終増益となった。本業の貸し出しによる利息が増え、資金利益が伸びた。
24年4〜9月期の最終損益(単体)は15行全体で420億円の黒字となった。23年同期の367億円から14%伸びた。資金利益(単体)は15行全体で1843億円にのぼった。23年同期の1725億円から7%増加し、税引き利益を押し上げた。
日銀は3月にマイナス金利政策を解除し、7月には政策金利を追加で上げた。貸出金利が上がり金融機関が中長期的に利益を上げられる環境が整ってきている。
「一言で言えばおおむね順調だ。主要指数は目標を上回るペースで推移している」(岩手銀行の岩山徹頭取)。総預金量が多い太平洋側の地銀を中心に、利益拡大への手応えを感じる経営陣は多い。
七十七銀行は24年4〜9月期決算の税引き利益が単体で198億円(23年同期比13%増)となり、過去最高益を更新した。東邦銀行は48億円(28%増)、青森・みちのく銀の合算は43億円(53%増)、岩手銀は34億円(21%増)、北日本銀行は22億円(2倍超)だった。
25年3月期の業績予想の上方修正も相次いだ。七十七銀は単体の税引き利益の予想を320億円から340億円に、岩手銀は55億円から67億円に、北日本銀は28億円から37億円に改めた。
青森銀とみちのく銀は25年1月に合併して「青森みちのく銀行」となる。プロクレアHDは合併による経費がかさむものの、金利などの「環境が悪くない」(成田晋社長)として新銀行単体の25年3月期の税引き利益の予想を6億円から21億円に引き上げた。
金利が上昇すると、債券価格が下落して評価損が拡大する。七十七銀は国債等債券の売却損を24年4〜9月期で100億円出しており、短期的に「金利上昇は全体でマイナスに働く」(小林英文頭取)と分析した。
北日本銀は有価証券のポートフォリオを組み替えたため「国債等債券損益が大幅に改善し」(石塚恭路頭取)、24年4〜9月期の税引き利益を押し上げた。
山形銀行もポートフォリオの改善に乗り出している。有価証券の残高を23年9月末から24年9月末までに1219億円減らした。三浦新一郎専務は「期間の長い外債の処理にめどがたった。今後は期間損益の改善に大きく貢献してくるだろう」と胸を張った。
足元では東北企業の倒産が増えている。人手不足や物価高に加えて、金融機関の貸出金利の上昇も倒産の原因になり得る。
東京商工リサーチの調査によると、24年4〜9月に負債額1000万円以上の規模で倒産した東北の企業は279社あった。23年同期から25%増加し、11年の東日本大震災以降で最多の件数となった。
景況感を厳しいとみて、取引先の倒産などに備えて計上する「与信関係費用が高水準で続く」(東北銀行の佐藤健志頭取)と見通す声もある。ただ倒産が「急激に増えることはない」(大東銀行の鈴木孝雄会長兼社長)との意見が大勢だ。
じもとホールディングス傘下の仙台銀行は24年4〜9月期の与信費用が23年同期から6億円増加して重荷となり、最終減益となった。坂爪敏雄頭取はあくまで一時的に「大口の信用コストが発生した」ことが要因だと説明した。
秋田銀行は与信費用が23年同期から33億円拡大し、36億円を計上した。それでも「下期に与信費用が増えるとはみていない。比較的落ち着いて推移するのではないか」(芦田晃輔頭取)との見通しを示した。
フィデアホールディングス傘下の荘内銀行と北都銀行は27年1月に合併し「フィデア銀行」に生まれ変わる。「スムーズな合併や融資先の支援のために引き当てを厚くした」(北都銀の伊藤大介常務執行役員)ことで与信コストが膨らんだ。
じもとHD傘下のきらやか銀行は不良債権処理の影響などで増益となった。24年3月期に貸倒引当金を大幅に増額しており、西塚英樹頭取は「現状では今後、想定以上に与信費用がかかると把握していない」と言及した。
15行で唯一赤字に転落したのが福島銀行だ。勘定系システムの更改により経費がかさんだ。加藤容啓社長は「一過性の費用で赤字となった。26年3月期以降はV路回復を考えている」と強調した。
規模が大きい地銀は総じて金利上昇の恩恵に浴し、東北地銀全体の利益を押し上げた。比較的小規模の地銀は企業倒産の増加を受けて与信費用が増加し、減益となるケースも目立つ。「金利のある世界」への対応力が試されている。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。