KKRとベインはともに富士ソフト株の非公開を目指しており、その可否が今後の焦点になる

米投資ファンドのKKRは6日、9月5日〜11月5日に実施した富士ソフトへのTOB(株式公開買い付け)で、発行済み株式の33.86%を取得したと発表した。KKRとTOB提案で競る米ベインキャピタルはともに富士ソフト株の非公開を目指しており、その可否が今後の焦点になる。

KKRは2段階で進めるTOBの第1回を完了した。11月中旬にも始める第2回は、第1回と同じ1株あたり8800円で買い取る。成立の条件として第1回と合わせて53.22%以上の取得を掲げている。

KKRとベインがそれぞれ目指す単独での株式非公開化は、少数株主から株式併合によって株式を買い上げるスクイーズアウト(強制買い取り)と呼ぶ仕組みを使う。実行には臨時株主総会で出席者の3分の2以上の賛成が必要だ。

KKRは第1回で33.86%と、3分の1以上を確保した。筆頭株主であるシンガポールの3Dインベストメント・パートナーズなどに加え、一般株主からも一定数を買い取ったとみられる。ベインは残る株式全てを取得しても、単独での非公開化が事実上不可能になった。

次の注目点となるのが富士ソフトの意見表明だ。ベイン案とKKRの第2回を比較し、いずれかに賛同を出す方向だ。

ベインはKKRを7%上回る1株9450円を買い付け価格として提示し、取締役会からの賛同をTOB開始の条件に定めた。「非公開化の有無にかかわらず、全ての株主の利益に資する提案だ」として賛同を求めている。

10月29日に公開した文書では、富士ソフトの企業価値の向上に向け、KKRと協力する余地があることも示した。少数株主に不利益が及ぶ恐れがある場合、TOBと同額の1株9450円で買い取る機会を提供すると説明する。

KKRは買い取り価格がベインを下回るのが難点だ。このため、富士ソフトの社外取締役でつくる特別委員会はKKRに、第2回で買い取り価格を引き上げる意向があるか聞き取るとみられる。

一方、現時点で単独の非公開化ができるのはKKRしかない点は有利になる。富士ソフトは複雑化した株主構成の整理を最重要課題に据えて非公開化の手続きを進めてきた。KKR幹部は「これまでの経緯を踏まえると、競合するファンド同士で共同投資をする余地は一切ない」と言明する。

米2大ファンドが繰り広げる買収争奪戦に翻弄され、富士ソフトは対応が後手に回っているとの指摘もある。KKRとベインのどちらの提案に賛同するか。幅広いステークホルダー(利害関係者)が納得できる答えを迅速に示す必要に迫られている。

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