【ロンドン=日高大】欧米の大手金融機関が、顧客の要望に合わせたオーダーメード(特注)の資産運用に注力している。仏アムンディや米バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)は顧客ごとに運用する「マネージド・アカウント」を拡大する。投資家ごとに開発する個別指数も増えており富裕層以外でも特注運用が普及する。
マネージド・アカウントは金融機関が顧客と投資一任契約を結び、顧客にかわって運用する。投資家の運用目的やリスク許容度、保有資産などから運用資産の配分比率を決める。個人ごとの要望や特性に応じた運用ができ、例えばESG(環境・社会・企業統治)資産の比率を高めるといった調整が可能だ。
アムンディは特定の運用戦略のなかで個別運用するセパレートリー・マネージド・アカウント(SMA)の拡充に動く。アムンディUSで商品販売を統括するジェイソン・キサンタキス氏は「SMAは足元で最も急速に成長している商品の一つ。今後も拡大したい」と話す。同社は米国で11本のSMAを運用し、2024年上半期にも新商品を加えた。
BNYメロンは9月、マネージド・アカウントの事務や管理業務などを手掛ける米アーチャーを買収すると発表した。BNYメロンは自社のマネージド・アカウント事業でアーチャーの技術や管理機能を活用する方針だ。
米ブラックロックは3月、運用会社の米スパイダーロック・アドバイザーズに追加出資し完全子会社にすると発表した。同社はデリバティブ(金融派生商品)運用に強みを持ち、投資家ごとにオプション取引を組み合わせた運用戦略を提供する。ブラックロックはスパイダーロックの運用手法を駆使し、自社のSMA拡大を図る。
マネージド・アカウント市場は拡大が続いている。主要市場の米国ではマネージド・アカウントの残高は23年に11兆ドル(約1600兆円)に上り、27年には18兆ドルまで拡大する見込みだ。運用大手が今後の成長市場として注目している。
マネージド・アカウントに加え、投資家の希望に応じて銘柄を個別に指数化する「ダイレクト・インデックス」も急拡大している。特定の銘柄を除外したり新たに加えたりでき、S&P500種株価指数やダウ工業株30種平均といった代表的な指数と近い値動きをするように設計される。
監査・コンサルティング大手のPwCによると、ダイレクト・インデックスの残高は21年の4620億ドルから27年には1兆4700億ドルに拡大する見込みだ。米JPモルガン・アセット・マネジメントや米バンガードが関連企業の買収に動くなど、マネージド・アカウントと同様に足元で金融機関が注力している分野の一つだ。
オーダーメード運用は金融機関に支払う手数料が相対的に高く、これまでは主に富裕層向けに提供されてきた。近年は資産構成を自動的に見直したり投資家需要を細部まで把握したりする技術が発展し、富裕層以外の個人投資家でも特注運用を利用しやすくなっているという。
日本では対面型の大手証券会社が富裕投資家向けにSMAを取り扱っているが、ダイレクト・インデックスは普及していない。対面型の証券会社はネット証券にマスリテール層を奪われており、ある国内運用大手の幹部は「今後は収益源を富裕層に求める証券会社がダイレクト・インデックスに注目するかもしれない」と話す。
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