国際送金大手の英ワイズは、2025年11月にも国内の銀行間送金網「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」に接続する。資金移動業として登録するフィンテック企業の参画は初めてだ。同社のサービス利用者は送金手数料の低下などの恩恵を受けられる可能性がある。
全銀システムを運営する全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)が17日に開いた理事会で、ワイズの加盟を承認した。国内の1000を超える金融機関が同システムを利用している。
全銀ネットは22年10月、全銀システムの接続対象に資金移動業を手掛けるフィンテック企業を加えた。それまでは加盟できる企業をメガバンクや信金・信組などの預金取扱金融機関に限っていた。ワイズがこのほど、加盟条件を満たしたことを受けて接続が正式に決まった。
ワイズは一部の国を除き、各国の銀行に開設した口座を使って国際送金を手掛けている。日本のワイズ送金サービス利用者が海外の受取人の銀行口座に送金する場合、送金者の銀行口座からワイズが国内に持つ銀行口座に資金を移す必要があるが、今後は全銀システムとつながるワイズの口座に直接送金できるようになる。
国内の銀行口座を介さずに済むため、ワイズが銀行に支払っている手数料や人件費分をユーザーに還元できるという。
送金時間の短縮にもつながりそうだ。例えば日本からオーストラリアに送金する場合、現在は20秒以上かかる取引が全体の4割を占める。まれに1時間以上かかるケースもあるというが、全銀ネットに接続すればほぼ全ての取引が20秒以内で完了する見込みだ。
全銀ネットは28年のシステム刷新に先立ち、25年11月に「API」と呼ぶフィンテック向けの接続手法を取り入れる。ワイズはこの方式で全銀システムに接続する初の事業者となる見通しだ。同社の接続をきっかけに決済事業者の加盟が相次げば、競争が促進され、国内の銀行間の送金手数料の引き下げにつながる可能性がある。
一方で加盟企業にはシステム運営費の負担する義務が課せられる。全銀システムとの接続による恩恵が新たに発生するコストを上回るケースは限定的との見方がある。
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