経団連は11日、年度内に改定が予定される政府の「エネルギー基本計画」に対し、原発を最大限活用するよう求める提言を発表した。原発活用は従来の主張だが、この中で経団連の行ったアンケート結果を恣意(しい)的に解釈する形で「約9割の企業が既設原発の再稼働の必要性を認識」と強調。数値を水増しした印象操作との批判が上がりそうだ。

◆アンケート対象は資源・エネルギー関連企業など475社

 提言では、2050年までに温室効果ガスを実質ゼロにする政府目標や、人工知能(AI)の利用拡大に伴う電力需要の劇的増加に備え、原発の最大限の活用を要請した。  問題のアンケートは、経団連の会員企業・団体約1700のうち、会長や副会長の出身企業や資源・エネルギー対策委員会など関連する企業475社のみを対象。そのうち回答したのはわずか167社で、その中で「原発再稼働は必要」と答えたのは86%だった。

経団連会館

 つまり会員企業・団体の1割に満たない会社が回答しただけのアンケート。そこで86%が「再稼働は必要」と答えたのをとらえて、提言書の中で「経団連アンケートにおいても、約9割の企業が既設の原子力発電所の再稼働の必要性を認識」と書き込んだ。  このためエネルギー基本計画を審議する委員らが提言書を見れば、9割もの企業が再稼働を要望しているとの印象を抱きかねない。経団連は、印象操作ではないかとの指摘に対し「アンケートの対象を絞ったのは電力問題に詳しい企業に限定したため。回答率(35%)も低くはない」と恣意性を否定した。(久原穏) 

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