<まちビズ最前線>  多様な人材が互いに尊重し合い、誰もが力を発揮できる職場を目指そうと、さまざまな企業で「DE&I」の取り組みが広がっている。人手不足が続く中、企業の持続的な成長に向けた経営戦略の一つにもなっている。(竹谷直子)

DE&I 多様性(ダイバーシティー)、公正・公平性(エクイティー)、包み込んで受け入れることを意味する包摂性(インクルージョン)の英語頭文字をとった言葉。すべての人に公正な機会を与え、多様な背景を受容できる社会を目指すための概念。

DE&Iに配慮したオフィスについて紹介するイトーキの大井卓爾さん(右)ら=中央区で

◆経営計画にジェンダー配慮 事務用品販売の「イトーキ」

 オフィスデザインを手がける「イトーキ」(中央区)は今年の中期経営計画に、「ワークプレイス(働く場所)×DE&I」をテーマに掲げた。顧客から「オフィスにLGBTQ(性的少数者)に配慮した場所がほしい」などの問い合わせが増えており、DE&Iに基づく提案に力を入れようと9月、多様なジェンダーに配慮した空間づくりなどを示したハンドブックを全社員約4000人に配布した。  会社としても、女性や多文化共生のコミュニティーづくり、LGBTQ当事者を対象にしたパートナーシップ制度などの導入に取り組んだ。その結果、「イトーキで働くことに誇りを感じる」という社員が昨年は約75%と、2019年の約40%から急増。株価も2年で約4倍となった。同社安全衛生管理室長の大井卓爾さん(48)は「今は、会社が人に選んでもらう状況。どれだけ多くの従業員に寄り添えるかが定着率を高め、自社を強くすることにつながる」と話す。

無料公開しているLGBTQ+のハンドブックを手にするセガサミーホールディングスの石井優貴さん(右)=品川区で

◆ハンドブックが「採用に好影響」 セガサミーHD

 エンターテインメント業界大手の「セガサミーホールディングス」(品川区)も、社内の取り組みにとどまらず、昨年9月、同社サイトで無料の「LGBTQ+ハンドブック」を公開した。これまで計約420の企業や団体、個人に利用され、今年は英語版も作成。こうした取り組みに魅力を感じて入社を志望する学生も少なくなく、同社コミュニケーション課の石井優貴さん(39)は「採用にもいい影響が出ている」とする。

DE&I推進の支援について話すジョブレインボーの星賢人さん=千代田区で

◆求人支援会社「多くのZ世代が求めている」

 「Z世代の多くが企業の多様性への取り組みを求めている」と話すのは、企業のDE&I推進の支援をする「JobRainbow(ジョブレインボー)」(千代田区)の代表取締役最高経営責任者(CEO)星賢人さん(30)。同社への相談件数も近年、急増しているという。「労働人口が減る中、人が主体でない会社は今後、立ちゆかなくなる。多様性に早めに取り組んだ会社が独り勝ちしていくだろう」と指摘した。 

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