自民党の新総裁に石破茂氏が当選して初の取引となった9月30日の東京株式市場は急落し、下げ幅は一時2000円を超えた。前週に株高が進んだことの反動や、石破氏が金融所得課税の強化などに前向きだったことが下落要因とされるが、株式市場では「影響は限定的」(エコノミスト)との見方も少なくない。

◆金融所得課税「強化」の姿勢

9月30日、自民党の臨時総務会であいさつする石破総裁(佐藤哲紀撮影)

 終値は前週末比1910円01銭安の3万7919円55銭。前週の株式市場では、金融緩和と財政支出の拡大を主張してきた高市早苗氏が自民党総裁選で優勢との見方が広がり、円安や株高が進行していた。大和証券の末広徹氏は「石破ショック」とも一部で呼ばれた30日の株下落について「これが巻き戻された」と説明。野村総合研究所の木内登英氏も「(大幅な下落は)一時的なもの」と予想する。  安倍政権の経済政策「アベノミクス」復活を訴えた高市氏に対して、石破氏は格差是正を強調し、株価に逆風となる政策を訴えてきた。金融所得課税強化については9月上旬に「実現したいですね」と言及。ただ、他の自民総裁候補から批判を受けると、石破氏は「少額投資非課税制度(NISA)などの小規模な投資は、さらに加速するようにしたい」とも答えた。  金融所得課税の強化を巡っては、岸田文雄首相が2021年の総裁選で打ち出した際、株価急落を受けて実現できなかった経緯がある。

◆円高下で成長戦略を打ち出せるか

 株式市場に否定的ととられかねない石破氏の発言はほかにもあった。法人税や富裕層の所得税について「負担する能力がある場合には、もう少し負担をお願いしたい」とするなど、増税を示唆している。  末広氏は、株式市場と世論はイコールではなく「アンチ・アベノミクスの石破氏の評価は悪くない」とみる。今後は円高傾向が定着する可能性が高まり、実質賃金が上昇しやすい環境になると予想。「(その間に)長期の成長戦略を打ち出せるかが重要だ」と指摘する。(石井紀代美、白山泉) 

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