日本銀行は20日、金融政策決定会合を開き、政策金利を0.25%に据え置いた。米国が利下げする局面に入ったことで、追加利上げが想定される日本の動向次第では、両国の金利差が縮まって円高が進む可能性がある。植田和男総裁は会合後の会見で、為替を左右する要因は「米国経済の動向にある」と繰り返し、今後の追加利上げの時期については慎重な発言に徹した。

◆日銀は政策金利0.25%に据え置き

 植田氏は会見で「追加利上げしていく考えは変わっていない」として、従来の方針継続を改めて示した。ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策や米国の経済情勢によっては円高が急速に進む可能性があることから、今後の追加利上げについては「すぐに上げることにはならない」と明言した。

日本円と米ドル札(イメージ写真)

 7月の日銀の利上げは、一時は1ドル=160円を超える過度な円安に歯止めをかけた。しかし、この2カ月半でドル円相場は20円近くも円高が進んだ。為替変動のペースが企業の想定を上回れば経済への悪影響が大きくなる。三菱UFJ銀行の井野鉄兵氏は「日銀としては追加利上げの足かせになる」と話す。

◆28ヵ月連続倒産増…「金利上げたら、経済は失速する」

 東京商工リサーチの調査では、主要上場メーカー109社が今期想定している為替レートは1ドル=143.5円。情報本部の増田和史課長は「これ以上の円高になると業績の見込みを引き下げざるを得なくなり、賃上げや価格転嫁が進みにくくなる」と指摘する。大手企業に比べて生産性が劣る中小企業では、賃金と物価の好循環から取り残される懸念が強まる。  静岡県の中小製造業の経営者は「金利上昇の負担よりも、円高の方が怖い」と話す。超円安時に原価が高騰したが、価格転嫁は十分に進んでいない。その中で円高に転じれば、大手企業との価格交渉がさらに難しくなる。「地方の中小企業は確実に縮小している。大企業の景況感だけでは賃上げは広がらない」と漏らす。  帝国データバンクによると、今年8月の倒産件数は28カ月連続で前年同月を上回った。都内の町工場経営者は「倒産が増えているのに1%まで金利を引き上げたら、経済は失速するのではないか」と懸念を示す。(白山泉) 

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