東京高裁の判決を受け、「逆転勝訴」などと書かれた紙を掲げる弁護団と亡くなった女性の夫(中)=東京・霞が関で(池田まみ撮影)
◆「女性は業者に雇われ家事労働していた」
共働き世帯の増加と高齢化で家事支援サービスの利用が増える中、判決は家事労働の働き手の保護を後押しする効果がありそうだ。家事労働者として働き急死した女性の遺影(右)と介護福祉士の免許(左)=支援団体提供
労働基準法は、家庭と直接契約する家事労働者には「適用しない」と明記し、労働時間規制や労災補償の対象外とする。ただ厚生労働省は、業者に雇われた家事労働者は対象になるとの通達を出している。◆1審が認めたのは「介護」の4時間半だけ
女性は2015年5月、訪問介護・家事代行サービス会社のあっせんで、寝たきりの高齢者のいる家庭で24時間拘束で1週間泊まり込みで働いた直後、急性心筋梗塞で死亡した。 一審は家事の部分は家庭との直接契約と判断。1日の労働時間は介護の4時間30分だけとして過重労働を否定した。◆「妻がやっと労働者と認められた」
高裁判決は家事も会社が詳細を指示し、報酬も介護と合算で支給するなど、女性は「一体の業務」として家事も含めて実質的に同社に雇われていたと判断。通達に照らし労基法が適用されるとした。労働時間は1日15時間、1週間で105時間に及ぶと算定した。 判決は家事労働を労基法の例外とすること自体の是非は判断していない。家庭と直接契約の場合、法改正をしない限り、何も保護がない問題は残る。 原告の夫は「妻がやっと労働者と認められて感謝している」と評価。厚労省は「判決内容を精査して対応する」とコメントした。労働基準法と家事労働者 労働基準法は、労働時間の上限や残業の際の割増賃金の支払い、けが・死亡時の補償など雇い主が最低限守るべき条件を定めた法律。法律用語で「家事使用人」と呼ばれ、「家政婦(夫)」を指す家事労働者については「適用しない」と明記している。1947年の施行以来、規定は変わっていない。
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