米連邦準備理事会(FRB)が4年半ぶりの利下げに動いた。0.5%という通常の2倍に当たる大幅な引き下げである。インフレの減速を踏まえ、労働市場が悪化するリスクに先手を打つ姿勢を明確にした点は評価できる。
さらなる利下げを進めるうえでは世界経済や市場の安定も見据え、雇用情勢に応じて柔軟な政策運営を心がけてもらいたい。
18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を5.25〜5.5%から4.75〜5.0%へと引き下げた。
FRBは新型コロナウイルス後の急激な物価上昇に対抗し、2022年春から1年あまりで政策金利をゼロ%近辺から5%超まで一気に引き上げた。そのあとも1年以上にわたり高金利を保った。
足元はインフレ圧力が弱まってきた半面、求人減や失業増など労働市場の減速が目立つ。FOMC後の声明では物価安定に加えて「雇用の最大化を支援する」と明記し、パウエル議長は記者会見で大幅利下げを「後手に回らないという決意の表れだ」と表明した。
ユーロ圏やカナダなどに続き世界最大の経済規模を持つ米国の中央銀行が利下げに転じたのは、主要国のインフレとの戦いが大きな転換点を迎えたことを示す。世界経済の今後にも心強い動きだ。
パウエル氏は「景気後退の可能性の高まりを示すものはない」と米経済の軟着陸に自信をみせた。
FOMCメンバーによる新たな予測の中央値によると、年内の利下げは残る2会合で計0.5%、25年は1年をかけて計1.0%の引き下げを見込む。今回のように1回で0.5%といった大幅な利下げを毎回のように続けると想定しているわけではない。
米経済の実力に見合う政策金利の水準である「中立金利」は2.9%と見積もった。今後2年以上をかけて、ゆっくりとこの水準まで金利を下げていく姿を描く。
ただし、雇用情勢の先行きは移民の大量流入といった特殊要因もあり読みにくい。大きく悪化するようだと利下げを急ぐ必要に迫られる可能性もある。反対に雇用や景気が堅調なままなら物価次第で利下げの早期停止もありうる。
11月に迫る米大統領選と、その後の連邦政府の政策が及ぼす影響に目配りも欠かせない。予断を持たず、雇用の最大化と物価の安定の両立に向けて状況に即した機動的な政策運営を追求してほしい。
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