1月から始まった新NISA(少額投資非課税制度)は、岸田文雄首相の看板政策。多くの個人が株式投資を始め日経平均株価は史上最高値を記録したが、8月の歴史的な株価暴落から乱高下が続き、評価は分かれる。新NISAの人気投資先は成長率の高い米国株など海外投資信託のため専門家は、円を売ってドルを買う円安の圧力となり、円安物価高の助長につながりかねないと懸念する。(市川千晴)

 新NISA 個人の株式や投資信託の運用益が非課税になる少額投資非課税制度。1月に拡充され、年間投資枠を最大360万円に引き上げ、5〜20年だった非課税期間を無期限とした。生涯で利用できる非課税投資枠は最大1800万円。口座開設数は3月末で2322万件。金融経済教育も推進し、貯蓄から投資への流れを後押しする。

◆家計の金融資産は200兆円増

終値で過去最大の下げ幅を記録した日経平均株価を示すモニター=8月5日、東京都中央区で(布藤哲矢撮影)

 「日銀の政策金利に連動し預金利率も上がったが、株の売買で得た利益に比べればわずかだ。次の首相も制度拡充を続けてほしい」。墨田区の自営業者(69)は訴える。日経平均株価は7月11日に史上最高値の4万2000円を越えるなど株高が続いた。日銀の資金循環統計によると、2024年3月末の家計の金融資産は2199兆円で、政権発足前の21年9月末に比べて約200兆円増えた。  だが日経平均株価は8月5日に過去最大の下落を記録。一時持ち直したが今月9日に再び1000円以上下落するなど、不安定な相場が続く。世田谷区の会社員(57)は「暴落には参った。海外投資は物価高を助長するそうなので岸田政権は40点だ」と辛口評価だ。

◆膨れる外国資産投資…「円売り」効果

 財務省の神田真人前財務官が7月にまとめた報告書によると、新NISAなどを通じた家計から海外株など外国資産への投資額は、24年1~4月が約4兆1000億円で、昨年1年間の投資額3兆5000億円を上回る。円安の原因は日米の金利差だけでなく、外貨建て商品はドルで買うため「円売り」となり、円安につながるとの指摘がある。23年末に1ドル=141円程度だった外国為替相場は、新NISAが始まった24年以降も円安基調が続き、7月には1ドル=161円台と歴史的な円安水準となった。  関東学院大の島澤諭教授は、岸田氏は格差是正を訴え21年の総裁選で令和版「所得倍増計画」を掲げたが、いつの間にか「資産所得倍増プラン」に変更したと指摘。「海外株人気が拡大すれば円安を助長し、物価高の原因となり格差助長につながりかねない。本末転倒だ」と副作用を懸念する。  

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