「将来、自分の年金はもらえるか分からない」 そう思っている若者は少なくないかもしれない。公的年金制度への不信が背景にあるからだろう。その不安に答えるデータを厚生労働省が初めて分析した。これからの社会を支える若者たちにとっては重要な情報である。だから、ぜひ紹介したい。 厚労省は5年に1度、公的年金制度の今後100年間の財政見通しをチェックする財政検証を実施する。いわば財政の「定期健診」といえる。今回は、実際に年金制度の加入者の記録を分析し加入状況や見込める年金額を年代ごとに推計した。加入者の実態により近い姿が分かる。 結論から言うと、シニア世代より若者の方が、将来受け取る年金額が増える。比較ができるよう物価調整し、今65歳の人と今20歳の人が65歳になったときに受け取る年金の平均月額を示す。 賃金上昇など経済成長ペースが鈍い過去30年の状況が続くと仮定した場合(過去投影ケース)、65歳の男性は14万9千円だが、20歳の男性は15万5千円となる。 特に、女性は65歳の9万3千円に対し、20歳は11万6千円と約2割増える。 さらに、経済の成長が続くと仮定した場合(成長継続ケース)、20歳の男性は65歳男性より約7割増え、25万2千円となる。20歳の女性は19万8千円と65歳女性の2倍を超え、女性の年金額の増加が目を引く。 もちろん、将来の経済状況は誰にも分からない。しかし、経済成長が滞る過去投影ケースでも、年金が増える推計は若者が感じる制度不信を少しでも払拭することにならないだろうか。 若い世代の年金額が増える要因は、シニア世代に比べ若いころから厚生年金に加入する人が増えたからだ。特に、働く女性が増えたことで女性も長く加入するようになった。過去投影ケースでの女性の平均加入期間は、今65歳が17.2年だが、20歳は29.7年、成長継続ケースでは31.6年まで延びる。 長く働き、賃金が上がれば、より多く保険料を払うことになり年金額に反映される。 しかも、公的年金は終身で受給でき、受け取る基礎年金額の半分は消費税収が投入され高齢期を支えている。 財政検証結果を受け制度改正の議論が始まる。厚生年金を適用する対象企業の拡大策は、加入できる人をさらに増やすことが狙いだ。残念ながら厚労省は制度改正を先送りしたが、国民年金の保険料納付期間の40年から45年への延長策は将来の受給額の底上げができる。いずれも保険料負担はあるが、その分しっかり給付がある。 若い世代にとっては年金の話は遠くて現実味がないだろうが、紹介したデータは自分の将来を考える材料になる。データは厚労省のサイトで公開されている。
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