ドイツ・ライプチヒにある欧州エネルギー取引所(中央)=ロイター

関西電力グループは年内にも欧州の電力先物市場に参入する。市場取引参加者として半年後や1年後など将来の電気を決まった価格で売買する。関電では傘下の新電力会社が卸売市場を通じて電気を仕入れている。新電力が電気を購入する際の価格変動リスクを欧州の先物取引でヘッジ(回避)し、想定外の損失を防ぐ。

関電子会社で新電力事業を手がける関電エネルギーソリューション(大阪市、Kenes)が、先物市場である欧州エネルギー取引所(EEX)の取引参加資格を取得する。年内にも電気の先物取引を始める計画だ。EEXでは東北電力も取引に参加している。

EEXは欧州最大のエネルギー分野の先物市場で、ドイツやフランスなど欧州各国の電力関連商品が取引されている。2020年5月には円建てで取引する日本の電力先物商品も上場した。

Kenesは日本卸電力取引所(JEPX)で取引される電気を小売り向けに調達している。現物の電力を取引するときに、将来、調達する電力価格が上がりそうなら先物市場で買っておく。あらかじめ価格を固定しておくことで想定外の損失を回避できる。会計上は現物と先物の差金を決済し損益を確定する。

EEXでは世界的なエネルギー企業を含む80社近くが日本の電力先物を取引している。日本国内でも東京商品取引所(TOCOM)が電力先物商品を上場しているが、2023年の取引量は9億7800万キロワット時とEEXの19分の1程度にとどまる。

関電エネルギーソリューションは21年からTOCOMで先物を取引しているが、EEXの方が先物価格の指標になっており、売買も成立しやすいため市場参加を決めた。

電気の価格は、気象状況や発電所の稼働状況などによる需給変動の影響をうけやすい。さらに2年前のロシアのウクライナ侵略開始後は地政学リスクの高まりを受け、液化天然ガス(LNG)や原油などの相場が高騰した。これに伴って電気の卸売価格も大幅に上昇し、22〜23年にかけて多くの新電力が事業停止せざるを得なくなった。

新電力は価格競争が厳しいうえ、電気を調達する際のコストを小売価格に即座に反映しにくい。先物取引を活用していかに価格変動リスクを避けるかが、収益を安定させるためのカギとなる。

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