衆院財務金融委の閉会中審査で答弁する日銀の植田総裁(23日午前)

日銀の植田和男総裁は23日、衆院財務金融委員会の閉会中審査に出席し、8月上旬に乱高下した株式や為替など金融市場の動向について「まだ引き続き不安定な状況にある」との認識を示した。「当面はその動向を極めて高い緊張感を持って注視していく」と述べた。

日銀は7月末の金融政策決定会合で政策金利を0.25%へと引き上げることを決めた。今後の金融政策については、利上げや金融市場の動きが経済や物価の見通しに与える影響を見極めると強調。そのうえで「経済・物価の見通しが我々の思っている姿通りに実現する確度が高まると確認できれば、今後金融緩和の度合いを調整していくという基本的な姿勢に変わりはない」と説明した。

7月会合での利上げを織り込んでいた市場参加者は少なかったことから、「サプライズ」(市場関係者)との受け止めが広がった。7月中旬に1ドル=161円台をつけた円相場は8月5日、一時1ドル=141円台まで円高が進んだ。

7月の米国の雇用統計が予想外に悪化して米国株が急落したことも連動し、日経平均株価は8月5日に過去最大の下げ(4451円安)を記録した。

植田総裁はこの間の市場の乱高下について、米国の経済指標の下振れを受けて「米国の景気減速懸念が急速に広がったのを機に、世界的なドル安や株価下落が進んだことが大きかった」との見解を示した。外国為替市場でのドル円相場は「世界的なドル安と、我々の(7月の)政策変更もあって一方的な円安の修正が進んだ」と説明した。

8月22日の株価は3万8000円台を回復した。植田総裁は「米経済についての過度な悲観的な見方が後退した」ほか、日本企業の決算発表を受け「企業収益力が評価された面もある」との認識を示した。

今後の金融政策運営にあたっては「我々の経済や物価に関する見方、政策への考えについて幅広い層に丁寧かつわかりやすく説明することが極めて重要だ」と述べた。2%物価目標のもとで「その持続的安定的実現という観点から、市場とも丁寧に対話し、適切に金融政策を運営したい」と語った。

植田総裁は今後経済や物価が見通し通りに推移すれば「金融政策は(景気を過熱も冷ましもしない)中立的な水準になっている」と述べ、利上げ継続を示唆する従来の姿勢を維持した。異次元緩和下で買い入れた上場投資信託(ETF)の扱いについては「処分をすぐにおこなうことは考えずに、今後の取り扱いについてある程度時間をかけて検討したい」と説明した。

日銀の内田真一副総裁は8月7日、今後の追加利上げについて物価や金融情勢を踏まえ「慎重に考えるべき要素が生じている」と述べた。内田氏の発言は不安定な市場の沈静化を優先したものとみられる。

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