スーパーマーケットなどで精米が品薄となり、欠品も相次いでいる。読者からも「どこも売り切れ状態」「何軒もお店を回った」「ドラッグストアにもない」と切実な訴えが届く。なぜなのか。いつまで続くのか。(吉田通夫、砂本紅年)

スーパーの白米コーナー。上段の2キロの商品は、もち米を残して売り切れており、下段の5キロの商品も一部は欠品になっていた=21日午前、東京都墨田区のスーパーイズミで

◆品切れ中…空の陳列棚に人だかり

「1人1点まで」「品切れ中」…。 都内のスーパーマーケットをのぞくと、販売制限や欠品を知らせる張り紙を掲出する店舗が相次いでいる。 ある店舗では、もち米と玄米が少し残っているだけで、白米のコーナーはからっぽ。「あら、ここもない」と、女性客が足早に去って行った。 別の店も、白米の在庫はゼロ。物珍しそうに客が集まり、空の陳列棚の前に人だかりまでできていた。

◆やっとあった!けど…

「やっと見つけた」。 東京都墨田区のスーパーイズミでは20日午後5時半ごろ、近所のパート女性(67)が、運良く2キロの千葉県産コシヒカリを購入していた。「災害に備えようと思ったけど、最近、大きなスーパーではなかなか買えなくて」 とはいえ、スーパーイズミも品薄であることに変わりはない。20日午前に10袋ほどあった在庫はすべて売り切れ、午後2時ごろに一部の白米が再入荷したところだった。

20日午後5時半ごろのスーパーイズミの白米コーナー。この時は午後2時ごろに入荷した白米が並んでいたが…=東京都墨田区で

五味衛(まもる)社長(65)は「うちの在庫状況は大手に比べればましだったんだけど、ほかで買えなかったお客さんがまとめて買っていったりすると、うちのお客さんが困る」。この日から「1家族1点限り」にお願いし始めた。 それでも、21日午前には、すでに2キロの白米は売り切れ、5キロの商品も一部は欠品になっていた。

◆店頭は品薄だけど実は「在庫はある」!?

そもそも、今年は6月ごろから、コメの需要に対し、供給に余裕がなくなっていた。 米穀安定供給確保支援機構が取引関係者に聞き取った調査によると、6~7月は「需給がひっ迫している」という指数が過去最高に達していた。 農水省のまとめでは、新米が出回る前の6月末時点で卸業者や小売業者などが抱える「民間在庫量」は、前年同月より41万トン少ない156万トン。比較可能な1999年以降で最も少なかった。昨夏の猛暑と渇水で品質が低下し、市場に出回る量が減ったことなどが影響した。 一方、どれだけ消費されたかを示す2023年7月~2024年6月の需要量は前年より11万トン多い702万トン。10年ぶりに前年を上回った。訪日外国人の増加による外食需要などが背景にある。 需給状況の指標となる、需要に対する在庫の割合は22.2%。30%前後で推移してきた近年から見れば低く、コメの価格上昇につながったとみられている。 とはいえ、2008年の18.8%や2011年の22.0%は上回っており、農水省は「(卸業者などを含め)在庫はある」と強調する。

◆地震、台風が引き金?

在庫があるなら、なぜスーパーなど消費者の目の前に並ばないのか。 例年、8月は、新米の本格的な出荷を控えてコメの在庫が最も少なくなる。加えて、そうめんやひやむぎ、冷やし中華など麺類が多く売れる時期のため小売店ではコメの取り扱いは少なくなりがちだ。 そこに、8日に発表された南海トラフ地震の注意報などを受け、非常用の買いだめが追い打ちをかけたと農水省はみている。

南海トラフ地震の注意報について記者会見する評価検討会の平田直会長㊧=8日、気象庁で

9日には神奈川県東部で震度5弱の地震も発生。16日には台風7号の接近に伴って東海道新幹線が運休するなど注意が喚起されたほか、19日は茨城県で震度5弱の地震もあり、災害への警戒心が高まったとみられる。

南海トラフ地震に向けた注意報が発令された際には、ペットボトルの飲用水が完売する店も相次いだ=9日、三重県内のスーパー

農水省の担当者は「在庫はあるので店頭にも並ぶが、すぐに売れてしまう状況が続いている」と語った。

◆新米も出回り始める

店頭での品薄はいつまで続くのだろうか。 もうすぐ、新米の出荷が本格化する「出来秋(できあき)」。既に、宮崎県など九州産や千葉県産の早米は流通し始めているが、9月には、年間流通量の4割が出回る。

猛暑の中で始まった稲刈り =14日、愛知県阿久比町

「そうなってくれば、状況も落ち着いてくるのではないか」と農水省の担当者。消費者に冷静な対応を呼び掛けた。 東京都内でスーパー「アキダイ」などを展開する秋葉弘道社長も「焦って買わなくても、新米を待てば、9月半ばぐらいには今のような状況は解消するのではないか」と話した。 

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