毎年4500億円を超える国のシステム経費のうち、7割超に当たる約3600億円分の使途が外部に公表されていない。2021年のデジタル庁(デジ庁)発足以降、各府省庁のシステム予算が同庁に一括計上されるようになり、使途の内訳が明示されなくなったからだ。デジ庁はようやく重い腰を上げ、今月末までに個々の経費を明らかにするが、財政の専門家は「費用対効果が明確で、国民にとって分かりやすい説明をしてほしい」と注文を付けている。(高田みのり)

デジタル庁を所管する河野太郎デジタル相

◆「各府省」の支出内訳は公表されていない

 システム経費は、22年度予算からデジタル庁に一括計上されてきた。同庁から各府省庁への配分を経て執行される仕組みで、同庁がまとめ役となることで各府省庁間でのシステムの重複を省き、効率化するのが狙い。24年度当初予算では4803億円で、うち「デジ庁」分がマイナポータルの利便性向上などに充てる1193億円、デジ庁を除く「各府省分」は3611億円だった。  問題視されたのは、「デジ庁」分の内訳は事業名や金額が明示されるのに対し、「各府省」分の支出内訳が外部に公表されていない点だ。例えば22年度には法務省の「出入国管理システム」に113億円、厚生労働省の「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム」に106億円が支出されるなどしたが、これは財務省の予算執行調査資料で明らかにされたもの。デジ庁自ら公開した資料はなく、決算後も「どの省の何のシステムにいくら充てられたか」が分からないため、政府内でも「システム経費はブラックボックス」と揶揄(やゆ)されてきた。

 国のシステム経費 政府による情報システムの整備や管理に必要な経費のうち、事業の標準化や統一化を図るため、デジタル庁の予算に一括で計上されている「情報システムの整備・運用に関する経費」(一般会計)。デジタル庁が所管するシステムについては個別の使途や金額が公表されている一方、他の省庁が整備・運用するシステムなどについては、個別の使途や金額が公開されていない。

◆「デジタル庁から説明することは困難」?

 また、公表のあり方を巡っても「その金額をかけるに値したシステムかどうかを検証する必要があり、使途が(外部から)見えないのはおかしい状況だった」(予算を査定する財務省の担当者)との指摘が出ている。各府省庁の支出内訳を公表していない理由について、同庁担当者は「デジタル庁から説明することは困難」とした上で、「政府全体としての決算額の公表など『見える化』の推進に取り組む」と答えた。  こうした課題を踏まえ、政府は今年6月に取りまとめた「デジタル行財政改革」で、情報システム経費の「見える化」を決定。8月末までに20~22年度の全てのシステム経費を一覧で公表するほか、経費が10億円以上のシステムでは行政事業レビューシートを公表して予算の流れや執行状況を明らかにするとした。

◆「わかりやすく公開を」と専門家

 国のシステム経費の全体像が公表されてこなかった弊害について、国の財政制度等審議会の分科会臨時委員も務めるSMBC日興証券の末沢豪謙(ひでのり)氏は「費用対効果や業績評価などの指標で分析ができない」と指摘。その上で「(国民に)この問題を『自分のこと』として考えてもらうため、用語や表現などを含め分かりやすく公開してほしい」とデジ庁に注文している。 

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。