ネット落札されたニューヨークのオフィスビル

【ニューヨーク=竹内弘文】ニューヨーク・マンハッタンのミッドタウン地区にあるオフィスビルが7月31日、ネット競売サイトで850万ドル(約12億7000万円)で落札された。米紙ニューヨーク・タイムズによると売り手が2006年に同物件を取得した金額に対して3%弱という。「97%値引き」は米商業用不動産の苦境を象徴する。

不動産専門メディアなどによると、落札物件は1960年代に完成した23階建てのビルで入居率は35%にとどまっていた。売り手はスイス金融大手UBS傘下の不動産会社。競売サイト「テンX」での落札者は明らかになっていない。落札対象は建物部分のみで、土地は別の保有者がいる。

コロナ禍で一気に広がった在宅勤務は経済再開後も定着しており、米都市部でのオフィス需要の減少につながっている。セキュリティーや設備の面で整った新築オフィスビルは高めの入居率を維持できているものの、古いビルはテナントの流出が続く。

米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めで銀行などはオフィスビル向けの融資を絞ってきている。オフィスビル保有者は借り換えに窮して、返済を断念して債務不履行に陥ったり、今回の売却のように損失覚悟で物件の売却を余儀なくされたりする事例が増えている。投げ売りが加速するようなら不動産市況を一段と冷やしかねない。

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