今年開示された企業の女性管理職比率で、複数の地方銀行の比率が昨年より大幅に下がったことが本紙の調べで分かった。昨年は厚生労働省の定義で管理職ではない「課長代理」などを含めて算出していたが、今年は同省が示す管理職の範囲に絞って割合を出したのが理由。女性比率の開示は昨年から上場企業に求められるようになったが、金融庁は、一部の地銀が見せかけの比率を上げるため厚労省の定義で算出していないことを問題視していた。(桐山純平)

◆前年から22ポイントもの大幅ダウンになった京葉銀行

 女性管理職比率は、上場企業の財務諸表である有価証券報告書(有報)への記載が求められている。本紙が、昨年の女性比率が10%以上だった地銀65行(持ち株会社含む)について今年の有報(6月提出分)と比較したところ、87%の57行は比率の変化が5ポイント未満だった。一方、残り8行は比率の下げ幅が5ポイントを超えており、理由を聞いた。  女性比率を22ポイント下げた京葉銀行(千葉市)は「女性行員のさらなる上位層での活躍を促すため、管理職の定義を厳格に運用した」と理由を説明。武蔵野銀行(さいたま市)は「他社との比較をしやすい開示内容にしたため」と答えた。

◆「課長級とそれより上位」「10人以上の長」が原則だが

 有報に記載する管理職の定義は、「課長級とそれより上位」「10人以上の長」などを原則とする厚労省所管の女性活躍推進法(女活法)に準拠している。一方で、厚労省は原則に当てはまらない場合、事業主の判断に委ねることを認めていた。昨年8月の本紙取材では、一部の地銀が管理職の範囲を独自に広げ、全行員に占める管理職数が半数近くまたはそれ以上になっていたことが判明。その結果、女性比率も高くなっていた。  課長代理や調査役を管理職に含めていた池田泉州銀行(大阪市)の管理職比率は、昨年68.4%と行員3人に対し2人の管理職がいることになっていたが、「課長以上」に改めると31%に低下し、女性比率も9ポイント減った。同行は「管理職の定義が厚労省のものとは異なっており、調査が不十分だった」と話す。

◆「代理級」を含めている地方銀行はまだ残っている

 上場会社の開示を所管する金融庁は今年3月、「女活法の『管理職』の定義に従って算定・開示していない」との文書を出し、一部企業の公表手法を改めて問題視した。岩手(盛岡市)や愛知(名古屋市)、豊和(大分市)の3行は金融庁の指摘などを受けて、管理職の定義を見直した。  ただ、今年も「代理級」を管理職に含めて20%超の女性比率を開示している地銀があるため、金融庁幹部は「個別に聞き取り調査をして実態を調べることもあり得る」と話す。

 女性管理職比率の開示 女性管理職比率の開示 岸田政権が拡大を目指す「人への投資」に関する情報開示の一環。企業の競争力に関わる従業員の多様性の実情を投資家や求職者に知らせ、女性登用が遅れる企業に育成や登用を促す狙いがある。有価証券報告書では他に、男女間賃金格差や男性育休取得率の公表も求められている。



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