駐車場に並ぶ輸送トラック=東京都江戸川区

先月末、大阪の繁華街で信号待ちをしていたら、そろいの羽織姿の男女が数人、チラシ配りをしていた。

興味本位で受け取った3つ折りの紙をひらいてみると「消費者の皆様へ 知っていますか?物流の2024年問題」とある。国土交通省近畿運輸局による広報のための文書だった。

4月からトラックドライバーの時間外労働の上限規制などにより労働時間が短くなる。そもそもトラックドライバーは不足しているうえに、輸送能力が不足すればこれまでのように物が運べなくなる恐れが出てくる。

近年新型コロナウイルス感染による緊急事態宣言下での外出自粛、店舗の臨時休業や時間短縮営業の影響で通信販売の利用が急激に広がった。

私自身、状況がコロナ以前に戻った現在も通販の利用は続いている。何と言っても便利だから。日用品に食材、衣類、特にペットボトルや重いもの、かさばるものはネットで検索し、タップ一つで注文、早ければ24時間以内に届く。体調不良で出かけられない時でもネットで注文できるのは本当に助かる。

でもそれらが可能なのは、全国津々浦々どこからでも家の玄関まで荷物を運んでくれる人がいてこそ。スムーズな物流の恩恵を受けながら、働く人の労働環境には想像が及ばなかった。

物流問題だけでなく、引っ越しにも影響は及ぶ。

日本は春先に引っ越しの需要が増える。今年はすでにピークを過ぎただろうが、来年、再来年も引っ越しシーズンはやってくる。その際に分散引っ越しのことを頭に入れておくと、引っ越し代金も抑えられ、予約も取りやすくなる。結果的に物流の負担が減らせる。

消費者が物流の負担を減らすためには、できるだけまとめ買いをし、再配達を減らすようにする。荷物を送る側は適切な配達料の負担をする。

安全性や労働条件などの認証を受けた物流企業を利用するのもそのひとつ。個々が協力することで物流システムを維持し、働く人の労働環境改善が両立する世界が望ましい。

中江有里(なかえ・ゆり)

女優・作家・歌手。昭和48年、大阪府出身。平成元年、芸能界デビュー。多くのテレビドラマ、映画に出演。14年、「納豆ウドン」で「BKラジオドラマ脚本懸賞」最高賞を受賞し、脚本家デビュー。文化審議会委員。

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