日本政策金融公庫の創業支援ミーティングの様子(9日、埼玉県深谷市)

日本政策金融公庫(日本公庫)が埼玉県北部での起業を活発にするために、民間金融機関との連携を深めている。2024年から県北の自治体で、創業支援の課題や手法について情報交換するミーティングを続ける。少子高齢化などの課題が顕在化している県北地域では、雇用を生む企業の存在が欠かせない。組織の垣根を越えて知恵を出し合う。

埼玉県深谷市で9日、同庫主催の「創業支援ミーティング」が開かれ、8機関から約20人が参加した。埼玉りそな銀行や武蔵野銀行、埼玉県信用金庫など地元の金融機関はもちろん、県境で接する群馬県の群馬銀行、栃木県の足利銀行からも参加者が訪れた。

日本公庫創業支援部の森本淳志部長による基調講演では、地方で創業支援が必要な理由、企業の事例、地方で起業するメリットなどを紹介した。講演の最後には、支援担当者の心構えについて言及し、「起業家が新規ビジネスにかける思いを想像し、好奇心を持って話しに耳を傾けることが大切だ」と訴えた。

その後のグループディスカッションでは参加者を2つのグループに分け、起業家の発掘手法、業績の判断基準などの足元で直面している課題を話し合った。参加者同士の親睦を深める時間も設けられた。

日本公庫熊谷支店は2月に熊谷市で初めてのミーティングを開催し、今秋には本庄市で3回目の開催を予定している。熊谷支店の奥村浩治融資課長は「埼玉県北は県南と比べて創業の機運醸成の機会が少なく、各機関が連携する意義がある」と話す。

県北地域は公共交通網や商業施設などが乏しく、県南や東京都への人口流出も問題視されている。実際に日本公庫の県北での創業融資の実績は「県内の他エリアと比較して少ない」(同庫)という。参加した金融機関にとっても、小さなパイを奪い合うより、協力して地域経済を底上げする方が得策だという共通認識があった。

今後具体的な協力の一つとして考えられるのが協調融資だ。日本公庫が全国の民間金融機関と実施した2023年度の協調融資の件数は3万2594件で、22年度から9%増えた。埼玉県北でもこうした動きが加速する可能性がある。

(荒牧寛人)

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