(撮影:梅谷秀司)

今年1月1日以降に上場承認を受けた会社から、証券コードに英文字が入るようになった。

新規上場会社への証券コード付番業務は、全国4カ所の証券取引所と証券保管振替機構の関連団体である証券コード協議会の専権事項で、上場予定会社が希望を口にするなどもってのほか。上場承認が下りるタイミングで一方的に付与されてくる性格のものだ。

1月1日から4月12日までに東京、名古屋、札幌、福岡の4市場に上場した社数は合計31社(東京28、名古屋2、札幌1、福岡0)あるが、このうち英文字入りコードの会社は25社(東京24、名古屋1)。残る6社は従来通りの4桁数字である。

証券コードが英文字入りではない5社

1社は昨年末までに上場承認が下りていたからなのだが、残る5社はすべて今年になってから上場承認を受けている。それなのになぜ英文字入りではないのかというと、すでにどこかの市場に上場していた会社の市場変更、もしくは重複上場で、もともと4桁数字のコードを割り当てられていたからだ。

このほか、上場廃止になった会社が再上場する場合も、従前のコードが割り当てられるので、上場廃止前が4桁数字なら再上場時も同じ4桁数字になる。

もっとも、ファンドによる完全子会社化で上場廃止になった会社の場合、通常は上場廃止後に買収のために設立したSPC(特別目的会社)と買われた会社が合併する。

その合併の際、SPCを消滅会社にしていれば法人格は同じなので、再上場の際も従前のコードを割り当てられるが、SPCを存続会社にしていると法人格が変わるので、従前のコードではなく新たなコードを割り当てられる。

国内全市場統一の証券コードが誕生したのは今から60年以上前の1960年10月。証券取引所が清算業務を機械化するにあたり、必要になったようだ。当初は各取引所が独自に主要な上場会社を対象に付番を始めたようだが、他市場との統一コードは大阪、名古屋など5市場が1960年4月に使用を開始、半年後に東京と札幌が合流した(略年表参照)。

統一コードは日本産業分類におおむね準拠する形で作成され、上場会社の業種とコードがひも付けられていた時代が30年以上続いた。

証券コードがいきなり変更された企業も

その日本産業分類が数年ごとに改訂を重ねるため、証券コードも変更せざるをえなかったと思われる現象も起きている。

たとえば、百貨店の高島屋は1949年5月、終戦後の証券市場再開と同時に上場してから今年で満75年。現在のコードは8233だが、会社四季報1971年夏号までは8103だった。それが秋号からいきなり8233に代わっている。百貨店に付けられていた8100番台が一斉に8230番台に代わったのだ。

セイコーグループも1971年夏号まで7761だったが、秋号からいきなり現在と同じ8050になった。この番号はもともと、1963年に上場廃止になった日本事務光機が使っていた番号だ。

この理由を証券コード協議会に尋ねたところ、「当時の資料がなく、確証はないが、日本産業分類上の百貨店の分類が変わり、こちらも変えざるをえなかった可能性がある」という。

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だが、やがて業種とコードのひも付けは支障が出始める。新規に上場する会社がどんどん増える業種と、ほとんど増えない業種の落差は大きく、どんどん増える業種で番号が不足しはじめたのだ。

このため、当初は上場廃止になった銘柄の番号を再利用することで、不足する番号を補う形がとられた。有名なのは、映画会社の大映とエイチ・アイ・エス、安宅産業とキヤノンマーケティングジャパンの組み合わせだ。

同一法人が再上場した場合は、再上場時点で同じ番号が空いていればそれが割り当てられるが、例外もある。現在1443の技研ホールディングスは、2018年1月に株式移転による持ち株会社化で上場した際、このコードになった。このとき、同社は実は実質3度めの上場だった。

そもそも1962年9月、技研興業として東証2部に上場したときの証券コードは1828だった。当時は六脚ブロックの工事とその型枠レンタル事業を営んでいて、工事のほうがメインだったので建設工事業に分類され、この番号になった。

その後経営が悪化し、会社更生法の適用を申請して1970年5月に上場廃止になり、その後再建を果たして1983年11月に東証2部に再上場した。

だが、その際に割り当てられたコードは9764。この時点では1828はまだ空いていたのだが、六脚ブロックの工事ではなく型枠レンタルがメインの事業になっていたので、建機レンタル業のコードになったのだ。

業種ひも付けやめても再利用を継続

上場廃止会社のコードを再利用するという苦肉の策も次第に限界に達し、1993年7月からは業種とのひも付けをやめ、3000番台など比較的余裕がある番号帯を使う方法に代わった。

だが、業種とのひも付けをやめても再利用は続いた。それ以前に欠番になっていたコードは、欠番になってから1年以上経過していれば使用できるという規定が残されたのだ。

その代表例がトーア紡コーポレーションである。同社が使用している3204は、1975年1月に上場廃止になった大和毛織(やまとけおり)という会社が使っていた。一方1949年5月上場のトーア紡が、証券コード誕生時から長年使っていたのは1つ前の3203。2003年に株式移転による持ち株会社化で再上場した際、割り当てられた。

持ち株会社はこのとき新設されたので、そのまま3203を使うことはできない中、次番号は欠番になってから1年以上経過していたので使えたというわけだ。

ただ、証券コード協議会によれば、「コードの再利用をやめてほしいという意見が出たため、証券コード協議会としてはなるべく再利用は避けるという運用が定着した」という。

上場廃止になった会社の多くは、倒産もしくは上場廃止基準に抵触して退場を余儀なくされた会社だ。期待に胸を膨らませて新規に上場してくる会社にとって、そんな会社が使っていたコードを割り当てられたら、縁起でもないと思うのは当然のことだろう。

JR九州が9023にならなかったワケ

実は上場廃止銘柄が使っていた番号以外にも、不自然に飛んでいる番号が存在する。こんな現象が起きるのは、一度も上場をしたことがない会社でも、社債を公募で発行すると証券コードが割り当てられるからなのだ。

たとえば電力会社の場合、9501の東京電力HDから始まり、9509の北海道電力まで、きれいに電力9社の番号が連番になっているのに、沖縄電力だけはなぜか1番飛んで9511。

実は9510は住友共同電力という、一度も上場したことがない会社に割り当てられている。沖縄電力以外の9社は1950年代に上場しているが、沖縄電力の上場は1989年。その間に住友共同電力が公募で社債の発行をしたようなのだ。

JR九州が上場した際も、JR東日本が9020、JR西日本が9021、JR東海が9022、そして9023が欠番で9024が西武HDだったので、当然9023と思いきや、割り当てられたコードは9142だった。

なぜか。証券コード協議会によれば、過去に東京メトロが社債を公募した際に9023を割り当てていたからだという。したがって、今夏にも上場が実現すると言われる東京メトロの証券コードは、英文字使用のコードではなく9023になる。

枯渇する前に英文字使用を開始

21世紀に入るといよいよ事態は切迫、ついに数字4桁では早晩番号が枯渇するので、英文字を使おうということになった。それが2009年である。

英文字混合の4桁とすることについてはさまざまな議論があり、数字5桁案も浮上したが、誤入力の可能性や、証券会社のシステム対応のしやすさなどから、英文字混合4桁に落ち着いた。この方式で6万5000社分が確保できるそうで、計算上は200年くらいは枯渇しない。

英文字の組み入れ方法の具体策が翌年固まり、この時点では数字4桁が枯渇した時点で英文字混合に切り替える予定だった。

だが、証券会社としてはいつ切り替わるのか、正確な時期がわかっていないとシステムの切り替え計画が立てづらい。そこで、多少数字4桁の残数があっても、時期を決めて切り替えようということになり、2024年1月から切り替えることを決定したのが2022年5月だった。

2023年7月からは証券会社との接続テストを繰り返し、万全の準備のもと、晴れて今年1月から英文字混合のコード使用が始まった。ちなみに昨年12月末時点の数字4桁のコード残数は1156個だった。

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