金融政策決定会合後、記者会見する日銀の植田総裁(14日、日銀本店)

日銀の植田和男総裁は14日開いた金融政策決定会合後に記者会見した。要旨は以下の通り。

 決定内容について。

 無担保コール翌日物金利を0〜0.1%程度で推移するよう促す金融市場調節方針を維持することを全員一致で決定した。次回決定会合までの長期国債の買い入れは2024年3月会合での方針に沿って実施する。その後金融市場で長期金利がより自由な形で形成されるよう買い入れを減額していく方針を賛成多数で決定した。

 経済・物価動向は。

 景気の現状は一部に弱めの動きもみられるが、ゆるやかに回復していると判断した。基調的な物価上昇率は需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想される。展望リポートの見通し期間後半には物価目標とおおむね整合的な水準で推移すると考えている。

 国債減額のペースや規模は。

 国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ予見可能な形で減額していくことが適切だ。減額する以上、相応の規模になると考えているが、具体的な減額の幅やペース、枠組みなどについて市場参加者の意見も確認しながらしっかりとした減額計画をつくっていきたい。次回会合で今後1〜2年程度の具体的な減額計画を決定し、すみやかに減額をおこなう予定だ。

 減額により緩和効果はどうなるか。

 今後国債買い入れを減額していけば日銀の国債保有残高は償還に伴い減少していくことになるが、国債買い入れに伴う緩和効果は引き続き相応に作用するとみている。

 なぜ1〜2年なのか。

 長期的に望ましい状態にまで1〜2年で到達できるとは思っていない。長期的に望ましい状態、例えば負債側でいえば超過準備の水準がどれくらいかという点に関しても現状では確固たることはなかなか言いにくい。しかしある程度の予見可能性を減額プロセスで担保したいことから、まず1〜2年分のスケジュールをおおまかに示せないかという判断に至った。

 次の利上げの判断で何を重視するか。

 短期金利の水準は、毎回の会合で経済・物価の見通しリスクを丁寧に点検したうえで、2%目標を持続的、安定的に実現するという観点から適切に設定していく。基調的な物価上昇率が見通しに沿って2%に向けて上昇していけば政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していく。見通しが上振れたり、見通しを巡る上振れリスクが高まる場合も利上げの理由になる。

 7月会合で国債減額と利上げを同時にできるか。

 経済・物価情勢に関するデータや情報しだいで短期金利を引き上げて金融緩和度合いを調整するということは当然あり得る話だ。もちろん長期国債買いオペの方で我々がすること、それがどう市場で消化されていくかを考慮した上で短期金利を設定していくことになる。

 為替は利上げ判断に影響するか。

 為替相場は経済・物価に大きな影響を与える。特にこのところ企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去に比べると為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面があることは意識しておく必要がある。最近の円安の動きは物価の上振れ要因であり、政策運営上十分に注視している。その動向や影響について毎回の決定会合でしっかりと点検し適切に対応していく。

 国債減額の具体策を先送りした理由は。

 丁寧に決定のプロセスを進めたいということ。ある程度市場にとって予見可能な形でスケジュールを提示したいという気持ちと、市場に不安定な動きが大きく起きるのは避けたい、そのため若干の柔軟性を担保したいということのバランスをどう取るかはなかなか難しい問題だ。判断を的確にするために市場参加者の意見も聞いてみたいということで1カ月かけようということになった。

 国債減額は量的引き締め(QT)か。

 (減額の)最大の理由は、金融市場における自由な価格形成を促進していくことだ。フローで買う量をどこまで減らしていくのかというコミュニケーションをしていきたい。もちろんその結果として保有している国債の残高は満期になるペース次第だが、段々減っていくことになる。金融政策的な色彩は無しか、極めて最小化させたうえで運営していきたい。

 先行きの短期金利の水準について。

 長期的な中立金利への考え方は変わっていない。(過去の日銀の試算から見込まれる中立金利の)1〜2.5%の幅は5つか6つの推定結果の範囲を示している。最低1%なのかというと、これは仮にだが最低0.7%か0.6%かもしれないし、1.3%や1.4%かもしれない。

 個人消費への見方は。

 物価上昇の影響で特に非耐久財を中心に弱めのデータが出ている。自動車の出荷停止の影響が直接消費にマイナスの影響を与えているという部分もある。(一方で)賃金が緩やかに増加していくと考えており、消費者物価(総合)は落ち着いてきている。実質所得の伸び率の低下がだんだん止まっていって消費が強めの動きに転じていくという基本的な見方については今のところ維持している。

 基調的な物価上昇への確信度合いは。

 ようやく4月のデータがだいたい出そろい、これから5月のデータが出てくるというところだ。これまでのところは私どもの見通しにおおむね沿ったデータの出方になっている。

 企業物価が上昇している。

 円安も含めて輸入物価等に若干の再上昇の気配がみえる。ある種「(輸入物価上昇の転嫁による)第1の力」の第2ラウンド目が少し始まっているかもしれない。今後注視してみていきたい。

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