FRBは年内の利下げ想定を3回から1回に減らした(FOMC後に記者会見するパウエル議長、米ワシントンのFRB本部)=ロイター

米連邦準備理事会(FRB)が政策金利の据え置きを決め、金融引き締めをすぐには緩めない姿勢を確認した。根強いインフレ圧力を踏まえ、利下げを始める時期を慎重に見極めようとするのは妥当な対応だろう。

先行きには不透明感も強い。経済・物価情勢をこれまで以上に入念に点検し、適切な政策判断につなげてほしい。

12日の米連邦公開市場委員会(FOMC)ではメンバーが予想する経済・物価や金利のシナリオも更新した。2024年の物価見通しを引き上げたうえで、年内の利下げ回数の中心的な想定を従来の3回から1回に減らした。

米国のインフレは今年1〜3月に減速が止まった。パウエルFRB議長は記者会見で利下げに動くべきかどうかを巡り、インフレ収束に向けて「確信を得るには、まだ時間がかかる」と語った。

足元では12日発表の5月の消費者物価指数で上昇率が鈍るなど、改善の兆しもみえる。パウエル氏は「正しい方向への一歩だが、1つの数値にすぎない」と述べ、判断を急がない意向を示した。

米国では5%超の高い政策金利がすでに1年ほど続く。景気は底堅さを保つが、個人消費などに弱含む気配もみえる。労働市場では雇用増や賃金上昇が続く一方で、企業からの求人は減り始めた。

利下げは早すぎるとインフレの再燃を許し、遅すぎると景気の失速を招く。物価に細心の注意を払いつつ、景気の軟着陸を確かなものにするためにも政策変更のタイミングを熟慮してほしい。

市場は米利下げの開始を秋以降と読む。ユーロ圏やカナダはすでに政策金利の引き下げに動いた。主要国で金融政策を巡る方向性の違いが大きくなると、新興国や途上国を含めた国際的な金融市場に影響が及ぶ可能性もある。円安が長引く日本も無関係ではない。

各国は20カ国・地域(G20)などの舞台で国境をまたぐ資金の動きに目を配り、市場や金融の安定を確保するよう努めるべきだ。

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