理美容機器、化粧品、医療クリニックの設備機器製造を事業領域とするタカラベルモントは、「美しい人生を、かなえよう。」をパーパス(企業目的)に掲げる。毎年3月8日の国際女性デーに合わせて展開しているジェンダー平等に向けた情報発信もパーパスを実現するための取り組みの一環だ。すべての人が自分らしく、美しい人生をかなえるための様々なプロジェクトに携わるリーダーに聞いた。

ママ理美容師の自分らしいキャリア形成をサポート

「ママ理美容師のためのキャリアヒントブック」を手にする大野恵さん

理美容師の10年以内の離職率・退店率は50%を優に上回っていると言われている。特に女性理美容師は結婚や出産をきっかけに離職する人が多いという。

「理美容師が自分らしいキャリアを築き、輝き続けられるようにしたい」。タカラベルモントは、このような思いから産休・育休を経て職場に復帰する女性理美容師の支援プロジェクトに乗り出している。

プロジェクトの第1弾として取り組んだのが「ママ理美容師のためのキャリアヒントブック」の作成だ。産休・育休に入る前の事前準備や復帰した後に役立つ具体的な取り組みを親しみやすいイラストとともに紹介。担当顧客の引き継ぎ、保育園探し、ブランクの解消、子どもが病気になった時の対応といった様々な課題の解決策を豊富に掲載している。

プロジェクトチームは営業、研究開発など理美容機器や化粧品の部署に所属する8人で構成。全国のママ理美容師から聞き取りを行うなど約1年かけて編集した。1万3千部発行して全国のサロンに配布し増刷を検討するなど好評だ。

仕事復帰を目指すママ理美容師の実践の場 チャリティーカットイベントを3月7日に実施

「キャリアの形成には、本人の努力だけではなく、周辺のサポートも必要です。業界全体が健全に成長していけるようにとの思いを込めて作成しました」とプロジェクトメンバーで化粧品事業の西日本営業部に所属する大野恵さん。

サロンのオーナー向けにママ理美容師が働きやすい環境になっているかを確認できるチェックシートも作成した。労働環境、取り組み、意識の3つの分野で22のチェック項目を設けている。働きやすい職場にすることで離職が減り、人手不足の解消につながる好循環が期待できる。「ママ理美容師のためにこれからも様々なサポート活動を企画していきたい」と大野さんは意欲を示した。

※理美容師キャリア支援プロジェクト

ミモザ賞創設し、女性研究者を支援

タカラベルモントが新たに研究賞を設立した。背景には、女性研究者の「自分らしい」キャリア形成支援を通じて、美と健康の科学技術向上に貢献したいという思いがある。

2023年9月から募集を開始したミモザ賞(助成金額50万円)は、用途制限を設けず、受賞者が自由に活用できる助成金として注目を集めている。

「研究者はキャリア形成初期の雇用環境が不安定な人が多く、特に女性は結婚、出産といったライフイベントとも重なり、研究に専念しにくい状況に置かれています。ミモザ賞はそういった一人ひとり異なる悩みを抱える研究者を応援したいという思いから生まれました」と開発本部マネージャーの上川裕子さんは話す。

幅広い分野の独創的な研究に出合えるのが楽しみと語る工学博士の上川裕子さん

ミモザ賞は、21年10月に創業100周年を迎えた同社が、次の100年を見据えた取り組みを考案するために始めた部局横断型のプロジェクト「MOVE4」から誕生した。上川さんを中心とした8人のチームは、研究開発を通じた会社の成長と社会への貢献をテーマに1年半前、プロジェクトに着手。大半が研究経験を持たないメンバーたちが、プロジェクトを通じて出会った研究者に魅せられ、賞の実現のため一丸となって熱い思いで取り組んだという。

ミモザ賞には全国から数十件の応募があり、24年2月、2名の研究者に贈られることが決まった。

ミモザ賞授賞式での上川裕子さん(前方中央)と受賞者の梶山十和子さん(同左)、山田あずささん(同右)

「多様な研究との出合いが当社の研究開発に新たな視点をもたらすことを期待しています。女性研究者が自分らしく生きられる環境は、他のマイノリティーにとっても生きやすい。研究者の多様性は、研究の多様性を生み出し、科学技術の向上につながっていくはずです」と上川さんは話している。

※タカラベルモント ミモザ賞

循環型社会の実現に向けた姿勢を示す

こだわりのシザーケースを紹介する下野光一マネージャー

美と健康の分野で事業を展開するタカラベルモントは、理美容や医療用のイス製品などを製造するものづくり企業である。これらの製品の製造工程で生じる合成皮革素材の裁断端材を再生する取り組みとして21年6月にスタートしたのが「Re:bonis(リボニス)」という活動だ。

名称は、リボーン(再生)とイスを掛け合わせている。生産企画室の下野(かばた)光一マネージャーら8人のメンバーは、社外パートナー、waji(堺市中区)と協業し、これまで従業員のネームホルダーやマルチケースなどを制作。23年秋には初の市販製品として、ヘアスタイリスト向けに合成皮革の特性を生かした軽量で使いやすいシザーケース「Type225」を制作し、活動の新たな扉を開いた。

「余白を残さないよう裁断プログラムを最大限工夫しても生じるレザー端材に、アイデアと技術で新しい命を吹き込むことができました」と下野マネージャーは話す。

タカラベルモントの医療用椅子と生産企画室の下野光一さん
タカラベルモントの医療用椅子と生産企画室の下野光一さん

シザーケースのデザインは1968年に発売され、現在も世界各国の理容室で使われている理容椅子「225」をモチーフにしている。風格のあるデザインとスタイリストの視点に立った機能を兼ね備えたこだわりの逸品だ。

リボニスメンバーが開催するワークショップは、小中学生の体験学習の機会として人気を集めている。「ものづくりの面白さ、ものを大切にすることの大事さを楽しく学ぶ中で、廃棄される運命にあった端材が未来を担う子どもたちの学びに役立つと思うと感無量です」と下野マネージャー。

リボニスは現在、アップサイクルだけでなく、リデュース・リユース・リサイクル活動にも取り組んでいる。タカラベルモントにとってリボニスは、循環型社会の実現に向けた姿勢を示すシンボルといえる。

※リボニス ※Type225 シザーケース 提供:タカラベルモント

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