ラガルドECB総裁は今後について「データ次第」と強調した(6日の理事会後の記者会見)=ロイター

欧州中央銀行(ECB)が6日の理事会でユーロ圏内のインフレ減速を理由に政策金利の引き下げを決めた。物価高の再燃リスクは完全には消えていない。今後の利下げペースは経済・物価情勢を慎重に見極め、市場との対話を重ねつつ柔軟に判断すべきだ。

ECBは主要な政策金利を0.25%の幅で下げた。利下げは4年9カ月ぶりだ。2022年秋に10%を超えた域内のインフレ率は2%台に減速した。ラガルド総裁は記者会見で政策変更の理由を「ここ数カ月、先行きへの自信が全般に高まってきた」と語った。

先進国の利下げへの転換はスイスやスウェーデンが先行し、主要7カ国(G7)ではカナダが5日に先陣を切ったばかりだ。

ドイツやフランスを含み域内総生産(GDP)が世界の15%ほどを占めるユーロ圏の利下げは、主要国の金融引き締め局面が転換点に差しかかったことを示す。

もっとも、主要国のインフレとの戦いがまだ終わったわけではない点には注意が必要だろう。

ECBは利下げの開始後も難局が続く。域内の賃金上昇の圧力はまだ十分には収まっていない。経済の実力を上回る賃上げが続くと、インフレがぶり返しかねない。ECBはこの先の賃金の減速を見込む半面、今回、今年と来年の物価見通しを上方修正した。

ラガルド氏は今後の利下げに関して「スピードや、かかる時間については非常に不確実だ」と話し、データ次第で対応する考えを示した。持ち直しつつある域内景気の動きもにらみ、長い目でみた物価の安定につなげてほしい。

米国では米連邦準備理事会(FRB)が年内の利下げ開始を視野に入れるが、景気や物価の先行きは予断を許さない。

日本はなお金融政策の緩和状態が続く。米欧とは異なる状況のもと、日銀は利上げを含めた正常化のタイミングをうかがう難しい局面にある。米欧中銀の意向や円相場の動きにも目を配り、金融政策の適切な運営につなげてほしい。

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