東北に拠点をおく地銀は収益力で二極化が進む

東北6県に拠点をおく地銀15行の2024年3月期決算(単体)が出そろった。有価証券の運用難や与信関係費用の増額などで8行が減益となった。各行が金利上昇局面で利ざやを稼ぐ戦略に転換し始めるなかで、収益力の二極化が進みつつある。

24年3月期の最終利益は15行単体を合算すると326億円で、23年3月期に比べて32%の減益になった。大幅に赤字を拡大したきらやか銀行を除く14行の単体合算でみると、570億円で1%の増益だった。

フィデアホールディングス(HD)傘下の北都銀行や荘内銀行は有価証券の運用難で苦戦した。

荘内銀行は24年3月期の単体で有価証券のうち債券で74億円の含み損を計上した。同行の松田正彦頭取は決算発表の記者会見で「タイミングをみながら、低利回りの有価証券を高利回りのものに入れ替えていきたい」と今後の経営戦略を語った。北都銀行も65億円の含み損となった。

新型コロナウイルス禍で企業の資金繰りを支えた実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済が本格化する。北都銀行は「業績悪化が懸念される取引先が増えている」(伊藤新頭取)のを考慮し与信関係費用を24億円と23年3月期から4倍ほどに積み増した。

北都銀行の伊藤新頭取(14日、秋田市)

こうした背景から北都銀行と荘内銀行の24年3月期の最終利益はそれぞれ91%減益の1億円、60%減益の6億円と落ち込んだ。

青森銀行や山形銀行は債券で100億円以上の含み損を出した。山形銀行は経営展望として「有価証券のポートフォリオ改善は重要課題だ」(佐藤英司頭取)と指摘した。

貸出金利を巡り「預金金利をまず引き上げており、コストが先行している」(同)と、業況の厳しさを吐露した。日銀のマイナス金利政策の解除に伴い、短期的には各行の利ざやよりも預金金利が上昇する。

15行全体の最終損益を大きく下押しした要因はきらやか銀行だ。取引先の再生支援費用の前倒し計上などにより、244億円の最終赤字となった。

一方で、中小企業向けなどの貸し出しが伸びて増益を果たした銀行もある。

七十七銀行は最終利益で288億円に達し、21年3月期から3年連続の過去最高益を更新した。増益を続ける理由の一つとして小林英文頭取は「事業性貸し出しの利回り上昇により貸出金利息が増加した」ことを挙げた。

七十七銀行の小林英文頭取(10日、仙台市)

台湾の力晶積成電子製造(PSMC)とSBIホールディングスが宮城県北部に計画する半導体工場の建設を受け、関連の「設備資金や不動産取得資金の融資が伸びてきている」(小林頭取)のも景況感を好転させている。

23年3月期比で19%増益となった東邦銀行や、36%増益の秋田銀行も貸し出しが増加した。それぞれ最終利益は54億円、45億円となった。

日銀の24年中の政策金利引き上げに関しての言及も相次いだ。

岩手銀行の岩山徹頭取は「0.25%ぐらいになるのではないか」との見通しを示した。フィデアHDの新野正博社長は「下期に0.25%程度の引き上げと短期プライムレートの上昇を見込んでいる」と明言した。

金利の上昇は「長期的には銀行にとってプラスになる」(福島銀行の加藤容啓社長)との見方が大勢だ。一方で「上がると業績はマイナスに作用する」(岩山頭取)との声も出た。

岩手銀行の岩山徹頭取(14日、盛岡市)

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