3月まで絶好調だった日本株の値動きが冴えない。今後はどうなるのだろうか(写真:ブルームバーグ)

まずは前週末の相場を振り返ってみよう。10日のNY(ニューヨーク)ダウ30種平均株価は前日比125.088ドル高の3万9512.84ドルと、8連騰で終了。3月28日の史上最高値にあと295ドルに迫った。

また、世界のファンドのベンチマークとなっているS&P500種指数も同8.60ポイント高の5222.68と、こちらもあと32ポイントでNYダウと同日につけた史上最高値だ。

欧州株も絶好調だ。ドイツのDAX指数もフランスのCAC40指数も、ともに6営業日続伸。前者は連日で、後者も約1カ月半ぶりに最高値を更新した。

さらに、ヨーロッパの経済動向を写すベンチマーク指数として広く参照されているストックス600指数も、連日で最高値を更新している。しかも、大きく売られていた中国株も、香港ハンセン指数はいつの間にか年初来高値をとっている。

連休明けは日本株だけが冴えない値動き

それに比べると、ハッキリ言って連休明けの日本株は冴えない。

7日の日経平均株価は、連休中にたまったエネルギーだと言われた大量の買いで、寄り付きから前営業日比600円超の上昇となった。直後に伸び悩み悩んだものの、終値は599円高と高値圏で引け、注目ポイントである25日・75日移動平均線を超えた。筆者が重要視している移動平均の総合乖離(25日・75日・200日線の乖離率の合計)も、2桁(13.18%)に戻った。

これで「さあ、いよいよ反転開始」かと思われたのだが、翌8日の日経平均は前日の上げを帳消しにする予想外の下げになった。とくに悪役がいたわけではない。幅広く売られていたので、連休明けの7~10日の週は「オプションSQ(特別清算指数)算出の週」ということもあり、市場では「上げも下げもSQ絡みの事情があったのか」と思われていた。

最近は朝方が高く後半に下げるパターンが見られていたものの、週末10日の日経平均が高寄りしたあと、さらに上昇。9時40分に前日比667円高となって3万8700円台に乗せたときには、「SQが終わって、さあこれからだ」と思われた。

だが、直後から売られるいつものパターンに戻ってしまった。オプションSQ値は、弱い相場の象徴とされ、立ち合い中に一度もSQ値を上回らない、いわゆる「幻のSQ」でもなかった。

なぜ日本株は弱いのか? 兜町は「待ち作戦」

この日本株の弱さはどこから来ているのか。今週(13~17日)は16日に日本の1~3月期GDP速報値が出るが、民間シンクタンクのほとんどが「実質で前期比マイナス」を予想している。この辺も売り材料になっているのか。

あるいは、9日に出た3月毎月勤労統計調査で、実質賃金が前年同月比2.5%減と、過去最長の24カ月連続の減少となったことを嫌気したのだろうか。

さらに、欧州株は強いが半導体株人気が低下している米国株市場で、短期金利の利回りが長期金利を上回る逆イールド状態が続いているのを嫌気したのか。

はたまた、日経平均の予想EPS(1株当たり利益)が3月4日の2387円45銭をピークに、100円以上も低下して来たのを嫌気したのか。兜町は手詰まり感に陥っている。

現在の兜町筋の動向を集約すると、「とりあえず決算発表後のアナリストレポートが出そろうのを待って、マーケットがどんな様子になるか確認してから攻めよう」となっている。

連休前から始まった決算発表は、15日あたりでおおむね終わる。連休後に大量に出たこともあって、今のところ、アナリストたちは決算数字を集めるのに手いっぱいで、ゆっくりレポートを書くことができていない。だが、大半の発表が終わる16日あたりからは続々と出てくるはずだ。

2025年3月期を中心とする各社の今期予想傾向としては、為替を読み切れないことなどから、かなり慎重になっている。例えば、トヨタ自動車の想定レートも1ドル=145円となっている。現在の155円前後とのギャップを、アナリストたちはどう判断するのだろうか。

前回の「5月以降の日経平均を決める最大のヤマ場が来た」(4月29日配信)でも書いたが、日経平均の下値のメドは昨年10月4日の安値3万0526円から今年3月22日の史上最高値4万0888円までの上げ幅(1万0362円高)の「3分の1押し」に当たる3万7434円だ。

4月19日にはこの水準を下回ったために、約1011円という今年最大の下げ幅を記録したわけだが、5月10日現在(3万8229円)では大きく上回っている。しかし、もし再度3万7434円を下回ると弱気派が増え、次は前出の上げ幅の半値押し水準である3万5707円が下値メドとなってしまう。さらにその次は「半値押しは全値押しだ」(昨年10月安値の水準まで戻る)などと、弱気の虫が鳴き出すだろう。

また、移動平均線との総合乖離率で上げ下げのメドを判断すると、チャートに需給のバランスが拮抗する総合乖離(25日・75日・200日移動平均乖離率の合計)ゼロ地点は、5月10日時点で約3万7180円だ。

ただ、筆者はもしこのような波乱があった場合、余裕筋は買えばいいし、十分買ってしまって余裕のない投資家は我慢すればいいだけだと思っている。その証左の1つとして、直近の需給を見ると、財務省の対内証券売買契約(外国人)は2688億円の買い越しとなっている。東京証券取引所の投資部門別でも2159億円の買い越しとなっており、外国人投資家は引き続き日本株を買っているように、流れは変わっていない。

日本株は日柄調整が必要なだけ、5月は売りではない

あらためて2024年の「ロケットスタート」を思い出してほしい。序盤の日経平均は大発会の3万3288円から3月22日の4万0888円まで22.8%も急騰した。

一方、この間のNYダウは1月2日の3万7715ドルから3月28日の3万9807ドルへ5.5%高、同じくS&P500種指数も4742ポイントから5254ポイントへ10.8%高となった(ともに3月28日が年初来高値)が、日経平均の上昇率と比べると、NYダウは約4分の1、S&P500も半分程度の上昇率だった。

また、5月10日現在1万8772ポイントと史上最高値で超元気な独DAX指数も、1月2日の1万6769ポイントからの上昇率は約11.4%と、日経平均のちょうど半分だ。つまり今は、上がりすぎた日本株の「踊り場的な日柄(日数)調整」の時間軸の中にあると考える。

日経平均は前出の最高値3月22日から約7週間が経過した。やはり上昇にはもう少し日柄が必要といったところだが、まずは5月の日本株は売りではなく買いだ。

欧米を中心とした世界では、5月は「セル・イン・メイ」(5月までは株式市場は比較的堅調なのでこの月にいったん売却せよ、という格言)と言われる。だが、日経平均の過去の月間騰落率を見ると、5月は、1月、2月、3月、4月、6月、11月、12月に負けている。6月以降の上昇に向けて、今月は買いでいいのではないか。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

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