naz=4月11日、沖縄市内

 沖縄県出身のシンガーnaz(ナヅ)が3月13日に7曲入りミニアルバム「SAVE MY LIE」をデジタルで先行リリースした。5月にはCD版を発売する。独立後初リリースとなったシングル「fiction」(2022年)に続く2作目。浮遊感あふれるサウンドの中で揺らいで響くnazの心地よい歌声は、聴き手を夢の中に引き込んでいくようだ。歌唱だけではなく、全曲の作詞作曲編曲を手がけるが、nazはあくまでも「プロデューサーではなくシンガー。シンガーとして好きな歌を歌いたいから曲を自分で作りました」と話す。自分らしさを追求するためには決して己のスタンスを崩さない芯の強さが歌にも表れている。(文・写真=ライター・長濱良起)

シンガーであることにこだわり

-独立後に初めてのミニアルバムリリースとなりました。

 

 「自分で作りためていた曲がありました。曲作りも含めて全て自分でやっていますが、プロデューサーというよりは、シンガーとしての活動の延長線上に作曲があります。なので、作曲はしていますが、シンガー・ソングライターという肩書もピンと来なくて。『シンガーだけど、曲も書いている』という感覚です」

 「一時期、音楽そのものをやめようと思っていました。当時の環境として、自分だけで自由に表現できるわけではなかったので、それが気持ちに合わず、音楽が嫌いになっていました。それで、全く違う仕事をしようとして、ホテルで働いていました。きれいな場所で、プラスの感情にあふれている空間で、好きだな、と思って。それで、業務の一環でステージで歌ったりしてたんですよ(笑)。そうしているうちに、やっぱり音楽がしたいという気持ちが少しずつ戻ってきました」

-シンガーという自身に強い思い入れがあるのはどうしてですか?

 「自分の固定観念なのかもしれませんが、編曲やマスタリング(楽曲全体の音質などを整える作業)のプロセスには、ちゃんと商業的なプロの方がいる、というイメージがあります。私はもともと曲を作る人でもマスタリングをする人でもなく、シンガーでいたいと思って音楽を始めました。ただ『心を込めて思い切り自分を表現したかった』から曲を作ったので、あくまで『シンガーの表現の一環で曲を作った』という意味合いにとどめています。曲はスマホアプリとパソコンで作っています」

-スマホアプリであのクオリティーが出せるんですか!?

 「『Auxy』というiOSアプリを使っています。移動中とか、ベランダで月を見ながら作ったり(笑)。パソコンは主に声の録音に使っています」

 

アルバムタイトルの意味

-アルバムタイトル「SAVE MY LIE」に込めた意味を教えてください。

 「『私の嘘(うそ)を助けて』という意味で、7曲目の曲名をそのままミニアルバムのタイトルにしました。自分が誰かに対して期待や信頼をして近くに感じていたけど、相手は実はそうではなかった時に、自分の気持ちを悟られないように、自分にも相手にも嘘をつくことがあると思うんです。そういう嘘をついてしまう自分の弱い部分をタイトルにして、過去の自分を隠したり嫌ったりするのではなく受け入れてあげるという意味を込めました」

-全曲が英詞ですね。

 「人生で初めて音楽を聴き始めた時からずっと英語の曲ばかり聴いていて、日本語の曲をほとんど聴いたことがありませんでした。なので、自分で歌うとなった時に自然と英詞の選択肢となりました。日本語の歌詞も今後入れていきたいです。海外向けに曲を作る中で、日本のシンガーという印象を持たせるためにも、日本語があった方が良いと思っています。19歳で3カ月間だけロンドン留学に行った時に、アジアの異国情緒ある雰囲気がかっこいいものだと評価されていました。その経験が『沖縄に生まれて良かった』と誇りを持つきっかけになりました」

-なのでジャケットデザインにも日本語が配置されているんですね。

 「はい、そうです。海外の人の目にも留まればいいなと思っています」

 

それぞれの曲に込めた思い

-1曲目の「You are pilot」は、ボーカルが入っていないインスト曲となっています。

 「トラック(歌以外のパート)ができた時点で人に聴かせたら『歌ってないけど、歌ってる。すでにトラックが歌になってる』って言ってもらえて。トラックを作っている時、確かに歌っている時の感覚と似ているなと思いました。そして声が入っていない状態でも、自分の中では曲が完成しているように思えていることにもその時に気づきました。パイロットになりたいという夢を持った友人に向けた曲です。上昇音から始まる曲なのですが、1曲目としてもぴったりだなと思いました」

-それぞれの曲にはどんな思いを込めていますか?

 「2曲目の『true spring』には、かなえたいと思う夢に目を背けないで進んでいきたいという気持ちを重ねました。この曲ではミュージックビデオを作る予定です。3曲目の『i want to』は、私が音楽で一番大切だと思っている『ノリ』について『このビートを感じることが全ての理由であり、答えである』ということを歌っています。4曲目の『a single word』は、たった一言がきっかけで疎遠になってしまった友人についての曲です。お互いが自分の信じた道を行こうという意味で書きました。6曲目の『hidden』は一番新しい曲です。音楽をまた始めようと思って、前向きに光を放っていこうと考えた時に、『怖がって光を隠す自分』と『自分を信じることのできる自分』の対話を描きました」

 

海外でのライブや発信に意欲

ー事務所から独立されて、名義がNazからnazになりました。

 「もともとは小文字の表記でやりたいという気持ちを持っていました。形も好きだからです。性格的にも自己主張するタイプではないので、小文字の方が自分に合っているなと思っています」

-今後はどのような展望がありますか。

 「どんどん海外でもライブをしていって、たくさんつながりをつくっていきたいです。SNSにも力を入れたいですし、リリースも積極的にやっていきたいと思っています」

韓国で行ったライブの様子=2023年12月(提供)  

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