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<「民間企業からのプレゼント受け取りNG」に不満が...。ヴァレンタイン・ロウ記者が貴重な証言を集めてつづった話題書『廷臣たちの英国王室──王冠を支える影の力』より>
メーガン妃によるケンジントン宮殿スタッフに対するいじめ疑惑を2022年に最初に報じた、「タイムズ」紙のヴァレンタイン・ロウ記者。
ヘンリー王子とメーガン妃の王室離脱への道のりに関して、どのような証言を得て、どのように見ていたのか? 綿密な調査と貴重な証言の数々からベールに包まれたイギリス王室の真の姿、そしてイギリス現代史が浮かびあがる...。話題書『廷臣たちの英国王室──王冠を支える影の力』(作品社)の第13章「ハリーに夢中」より一部抜粋。
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2018年秋、サセックス公爵夫妻はオーストラリア、フィジー、トンガ、ニュージーランドの外遊に出かけた。二人の秘書官ジェイソン・クナウフは、そのツアーには参加できなくなった。
■【写真】トンガの空港でドレスに値札をつけたままタラップを颯爽と降りるメーガン妃 を見る
オーストラリアに先乗りする予定だったが、鎖骨を折り、ツアー参加を断念せざるを得なかったのだ。思いがけない予定変更で、2つの大きな出来事が起こる。
まずは従来行われていたツアー直前のブリーフィングが、ツアーバスや写真撮影に関するいつもの情報交換ではなかったことだ。
ツアー直前のブリーフィングといえば通常、ロイヤルファミリーが到着する前夜に会議室で行われ、同行する報道関係者にメディア対応の詳細を伝える。しかしそのときのブリーフィングは忘れられないものだった。
テーブルの上のコーヒーカップにクナウフの同僚の携帯電話が置かれており、クナウフがスピーカーモードで記者たちにメーガン懐妊のニュースを知らせたのだ。これは、海外ツアーの始まりとしては実にドラマチックな幕開けだ。
もう1つの大きな出来事は、現地から約1万8000キロ離れたクナウフがハリーとメーガンとの関係に決着をつけたことだ。
特にこの数カ月、クナウフはスタッフに対するメーガンの対応に(ハリーの対応も)頭を悩ませていた。この問題が注目されるようになったのは、メーガンのパーソナルアシスタント、メリッサ・トゥバチが宮殿に入り、わずか6カ月で辞職したことに端を発している。
メーガンのパーソナルアシスタントが辞めたのはトゥバチで2人目だ。トゥバチは39歳のフランス女性で、それまではポップシンガーのロビー・ウィリアムズと、その妻でオーディション番組『Xファクター』の審査員アイーダ・フィールドの夫婦の下で働いていた。
トゥバチが王室を去った後、ある王室関係者がトゥバチに敬意を表し、彼女がハリーとメーガンの結婚式の運営で果たした役割とその仕事ぶりをたたえている。「メリッサは非常に優秀な人でした」。
その関係者は、トゥバチとケンジントン宮殿の同意の下で行われた公式声明でそう伝えた。「ロイヤルウェディングでは中心的な役割を果たし、挙式を成功に導いてくれました。王室関係者の誰もが彼女との別れを惜しむでしょう」
その1週間後、サンデー・ミラー紙が、メーガンがメリッサ・トゥバチを泣かせた様子を記事にしている。ある関係者は同紙にこう話している。
「彼女の仕事はとてもプレッシャーが大きくて、最後には手に負えなくなってしまったのです。よく我慢していましたよ。メーガンは言いたい放題言って、しまいには彼女を泣かせていました。(中略)メリッサはプロ中のプロで、どんな仕事でもこなせます。でも、限界に達してしまい、別々の道を歩んだ方がお互いのためだとなりました」
それ以来、複数の王室関係者が、メーガンとトゥバチの衝突は、一部の企業がメーガンに送ったプレゼントが主な原因だったと話している。プレゼントは絶えずケンジントン宮殿に届けられていた。
「洋服、ジュエリー、キャンドル......プレゼント攻勢が止むことはありませんでした」とある関係者は指摘する。
王室には、ロイヤルファミリーは民間企業から無料で金品をもらってはいけないというルールがあり、トゥバチはその王室のルールを厳格に順守していたようだ。
しかし、メーガンにとってその方針は受け入れ難いものだった。サン紙の報道によると、ファッション関連のプレゼントの件でメーガンと王室スタッフの間でいさかいが始まったのは、メーガンがハリーの恋人だと公表されたときからだ。
サン紙は関係者の話を紹介している。「プレゼントを受け取るのは女優であれば全く問題なかった。でも、ロイヤルファミリーの常識とは違うとしっかり教わる必要があった」。
作家ティナ・ブラウンによると、メーガンの豪華なプレゼント好きは、ブログ「ザ・ティグ(The Tig)」を書いていた女優時代に遡るという。
「彼女は、デザイナーブランドのバッグを喜んで受け取る人物として、ラグジュアリーブランドのマーケターたちの間ではよく知られていた」とブラウンは書いている。
トゥバチ辞職の報道が出たのは、メーガンとケイトがよそよそしいという噂や、シャーロット王女のブライズメイド用ドレスの試着後にケイトが泣かされたという疑惑がちょうど取りざたされたころだ。
特にケイトを泣かせた疑惑は、この先長い間、メーガンの不満の種になる(後に本人は、泣いたのはケイトではなく自分だと主張している)。スタッフの辞職やメーガンの執拗な要求など、絶えず流れてくる噂は、結局メーガンに不利な話にしかならなかった。
「メーガンは気難しい」、「メーガンはスタッフに優しくない」、「メーガンはケイトが好きではない」、そんな噂が飛び交い、次第に新聞各社はメーガンを「気難しい公爵夫人(Duchess Difficult)」と呼ぶようになった。
一方のメーガンも、スタッフの離職話をますます気にするようになった。メーガンの支援者たちは、彼女こそ人種差別や性差別、もしくはその両方の犠牲者だとして、メーガンを擁護しようとしていた。
メーガン応援団のリーダーといえば、『自由を求めて(Finding Freedom: Harry and Meghan and the Making of a Modern Royal Family)』の共著者オミッド・スコビーとキャロリン・ドゥランドだ。この2人は、メーガンの友人の言葉を著書で紹介している。
「気難しい公爵夫人、皆が問題視しているのはそこなのです。メーガンほど一緒に働きやすい人はこの世の中にいないのに」
ただそれは、全くの真実というわけではない。
ヴァレンタイン・ロウ(Valentine Low)
イギリスのジャーナリスト。全寮制パブリックスクール、ウィンチェスターカレッジを経て、オックスフォード大学を卒業。1987年から『The London Evening Standard』で記者を務めた後、2008 年から『The Times』で王室取材を担当。2021年5月、オプラ・ウィンフリーのインタビュー映像が放映される数日前に、メーガンによるパワハラ疑惑の記事を発表する。著書に『One Man and His Dig』(Simon & Schuster、2008年、未邦訳)がある。
『廷臣たちの英国王室──王冠を支える影の力』
ヴァレンタイン・ロウ[著] 保科 京子 [訳]
作品社[刊]
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