特別陳列「ミステリー小説のなかに考古学が登場する件」が14日、奈良県橿原市畝傍町の県立橿原考古学研究所付属博物館(橿考研博)で始まる。古代史研究家としても知られる松本清張の作品など、奈良は多くの小説の舞台になっており、“ミステリー遺跡探訪”をいざなう展示だ。2025年1月19日まで。
清張ファンの絹畠歩・橿考研主任研究員が22年発表した論文「小説に描かれた考古学世界の理想と現実―松本清張と以後の小説」に基づく展示。晩年、古代史に傾倒した清張は事件と遺跡・遺物を絡めた小説を多く発表する。明日香村が舞台の「火の路」は有名で、国史跡「酒船石」など古代石造物への清張自身の学説も登場する。
他の作家では内田康夫の旅情ミステリー「箸墓幻想」が知られる。邪馬台国・卑弥呼の墓の説もある箸墓古墳(桜井市)の研究者が殺された設定。橿考研がモデルの「畝傍考古学研究所」も登場する。また、万城目学の謎解きファンタジー小説「鹿男あをによし」は、奈良公園(奈良市)や卑弥呼の鏡といわれる「三角縁神獣鏡(さんかくぶちしんじゅうきょう)」が出土した黒塚古墳(天理市)が舞台。08年テレビドラマ化され、県内はロケ地巡りの観光客でにぎわった。
特別展示は海外作家作品を含め、ミステリー小説17編にちなむ県内の遺物約100点を紹介。黒塚古墳出土の三角縁神獣鏡(重要文化財)、清張「万葉翡翠(ひすい)」関連として澤ノ坊2号墳(宇陀市)の「翡翠製二連勾玉(まがたま)」、コナン・ドイル「高名な依頼人」に登場する正倉院宝物(模造品)などが並ぶ。
展示は25歳の若手所員、伊東菜々子技師が企画。「小説やドラマに橿考研が登場するとわくわくします。考古学ファン以外の方も来館するきっかけになればうれしい」と話している。橿考研博(0744・24・1185)は月曜と12月28日〜1月4日休館。一般400円、大学・高校生300円、小中学生200円。【皆木成実】
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