ドラマ「366日」に主演する俳優の広瀬アリスさん=2月24日、幾島健太郎撮影
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ドラマ「366日」雪平明日香役(フジテレビ系=月曜午後9時)

 実は取材に訪れる前、記者はちょっとだけ心配だった。

 広瀬の出演作と言えば、NHK連続テレビ小説「わろてんか」や「ラジエーションハウス」(フジテレビ系)、昨年に主演した「マイ・セカンド・アオハル」(TBS系)など多数。さぞ人前での仕事に慣れているかと思ったら、4年前の本紙インタビュー記事に目を通すと「あがり症」で、共演者を前に「朝からものすごく緊張してしまって……」ということがあったという。とすると、今回の取材でも、話が途切れて気まずい空気が流れないか……。取材に向かう電車で、不安が頭をよぎった。

 そして取材会の会場へ。広瀬は4月スタートの連続ドラマ「366日」(29日が第4話)で、主演の大役を担う。「座長」として、共演の俳優とどう打ち解けるのか。そんな質問に、本人は過去の出演作でも見せてきた柔らかな笑顔で答えた。

 「人見知りなので、(共演者に)震えながら話しかけたいです」。そう「決意表明」する姿に、周囲のスタッフらがつられて噴き出す。さらに続ける。

 「私は29歳になりましたが、撮影現場には年下の人が増えてきた。人見知りって言っていられないなって、最近は思っているんです。盛り上がる話が見つかればいいんですが、相手に対して積極的に……とは思いつつ、少しずつでもいいので、掘り下げていきたいですね」。自身の率直な思いを、偽らず丁寧に語る姿。そんな人柄が広瀬の魅力なのだと、気付かされた。

 その「366日」は、人気バンド「HY」が発表した同名の曲の世界観に着想を得た、というオリジナルストーリー。HYの曲は「恐(こわ)いくらい覚えているの あなたの匂いや しぐさや全てを」など、かなわぬ恋の思いをつづった歌詞が共感を呼び、大ヒットした。

「366日」の一場面。眞栄田郷敦(左)と=フジテレビ提供
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 「聞いていて切なくなる、心がキュッとするような曲ですよね。友達の『失恋会』なんかで、カラオケで歌っていました。はははっ」。広瀬自身、「366日」は以前から大好きと公言してきた曲だった。その歌と深い縁のある作品で、主演のオファーがあったのは「純粋に、運命だなって思いました」。

 主人公の雪平明日香(広瀬)は高校生の頃、同級生の水野遥斗(眞栄田郷敦)に恋心を抱いていたが、思いを告げられぬまま卒業の日を迎えた。およそ10年の時を経て、明日香と遥斗は同窓会の場で再会。それを機に、2人の新たな恋が始まった。

 ところが、物語は早くも急展開。遥斗は見知らぬ子供が橋から落ちそうになっているのを助けようとして、自分が転落し、頭を打って入院する。1カ月以上が過ぎたが、彼の意識は戻らないままだ。

 思いを寄せる相手と、何も話せない。明日香の恋心は今後、どこへ向かうのか。価値観が多様化し、かつてほど「恋愛をするのが幸せ」と声高に言われなくなっている時代。そんな今、「『人を愛する』ことに全力で向き合うって、どういうことなのか。脚本を読んだり『366日』の曲を聞き返したりしながら、すごく考えます」。

 自身は明日香とほぼ同じ年齢。「10代の頃に想像していた『30歳』は、落ち着きがあって、春にトレンチコートを着ちゃうようなカッコいい人でしたが。今思うと、中学生の頃と全然変わっていないですね」。そうは言いつつ、昔と比べ、自身の中で大きく変わった点がある。

 「大人になるにつれ、恋愛に限らず、いろいろな経験をしますよね。今になって『366日』を聞くと、その歌詞の一行一行の重み、例えば人間らしさがむき出しになっている言葉だったりとか、それがグッと深く感じられるようになりました」

 今作で、これまでとはひと味違う「深さ」を見せられるのか。期待できそうだ。【屋代尚則、写真・幾島健太郎】

広瀬アリス(ひろせ・ありす)さん

 1994年12月11日生まれ。静岡県出身。これまでの出演ドラマは「探偵が早すぎる」「トップナイフ」「恋なんて、本気でやってどうするの?」「どうする家康」など。

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