メネンデス兄弟は財産目当ての冷血な殺人鬼か、長年の性的虐待の被害者か NETFLIXーSLATE

<大ヒットした実録殺人劇の第2弾として、ネットフリックスが80年代の有名な事件をドラマ化。『モンスターズ メネンデス兄弟の物語』がイマイチな3つの理由とは?>

ライアン・マーフィーがまたやってのけた──と言っても、これは褒め言葉ではない。

マーフィーがイアン・ブレナンと共同で制作した2022年のドラマ『ダーマー モンスター:ジェフリー・ダーマーの物語』は、17人もの青少年が殺害された実際の連続殺人事件を描き、ネットフリックスで大ヒットした。それから2年。マーフィーとブレナンのコンビが再び犯罪実録もののドラマを送り出した。


今回の題材は、1989年にロサンゼルスの高級住宅地ビバリーヒルズで起きた殺人。ライル(当時21歳)とエリック(当時18歳)のメネンデス兄弟が資産家の両親を殺害した事件だ。

アメリカ社会はこの事件に震撼した。検察側は、兄弟が財産目当てで冷酷に両親を殺害したと主張。弁護側は、父親による長年の性的虐待に対する自己防衛による行為だったと主張した。

9月に配信が始まった『モンスターズ:メネンデス兄弟の物語』は大衆向けの作品という性格上、センセーショナルな内容になっている。それに対し、メネンデス家の人々はこのドラマを下品で中傷的だと糾弾し、批評家もこぞって酷評している。

事件の真相がはっきりしない以上、マーフィーは双方の視点を示そうと考えたようだ。しかし、いくつかの理由により、その試みはうまく機能していない。

繊細なテーマを無遠慮に

第1の理由は、マーフィーのストーリーテラーとしての力量が不足していることだ。この作品は総じて、悲惨な仕上がりと言わざるを得ない。

例えば、ディナーパーティーが不自然に延々と続くシーン。これはおそらく、ネーサン・レーン演じる雑誌記者に、90年代当時のロサンゼルスの社会的・政治的状況を大まかに説明させるために挿入されたのだろう。


第2の理由は人物描写の難しさだ。視聴者は事件の真相について2つの可能性を示される。兄弟がカネのために冷血に両親を殺害した可能性と、彼らが長年にわたり身の毛のよだつような性的虐待を受けていた可能性だ。

とりわけ兄のライル(ニコラス・アレキサンダー・チャベス)は、悪魔のような人間として描かれたかと思えば、別の場面では気の毒な男の子として描かれる。ところが視聴者には、それぞれの場面で描かれているのがどちらのライルなのかが、すぐに分かるようになっていないのだ。

第3の、そして最も重要な理由は、メネンデス兄弟が実在の人物だということだ。2人は今も刑務所で服役し、潔白を主張し続けている。自分たちはおぞましい虐待の被害者だという主張を変えていないのだ。

そうした繊細なテーマを扱っているのに、マーフィーには慎重さが見られない。いわば地雷原に意気揚々と踏み込んでいき、もし地雷が爆発して爆死しても上等だと思っているかのようだ。

前作の経験からネットフリックスとマーフィーが学んだ教訓は、「大勢の人がこのドラマを見たから、また同じようなものを作ろう」というものだったようだ。

そう計算していたとすれば、思惑は当たったことになる。今回のドラマも大勢の人が視聴した。また遠くない将来、同じ路線の悪趣味なドラマが制作されるのだろう。


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『モンスターズ メネンデス兄弟の物語』予告編1 - Netflix

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