2024年のノーベル経済学賞の受賞が決まった米マサチューセッツ工科大(MIT)のダロン・アセモグル教授らの著書が話題だ。一部の書店では売り切れとなった著作もあり、出版社は重版を決めた。受賞をきっかけにブーム到来となるか。
アセモグル氏は、MITのサイモン・ジョンソン教授とシカゴ大のジェームズ・ロビンソン教授の2人と共同受賞した。
3氏は国家間で格差が広がる背景に、政治や経済といった社会制度の違いがあると実証したことで知られる。国家の繁栄には民主主義的な制度が重要だとし、法の支配が乏しく、国民を搾取するような制度を持つ社会の成長は長続きしないことを裏付けたとされる。経済学賞の授賞理由も「社会制度の形成と、国家の繁栄に与える影響に関する研究」だった。
アセモグル氏ら受賞者は共著も多く、その一部は既に日本語訳されている。早川書房は、アセモグル氏とロビンソン氏の共著で国家の盛衰のメカニズムに迫ったベストセラー「国家はなぜ衰退するのか」(邦訳13年)や「自由の命運」(同20年)を出版している。23年にはアセモグル氏とジョンソン氏の共著「技術革新と不平等の1000年史」の邦訳を出版した。いずれも上下巻の大著で、今回の授賞理由と密接にかかわる経済書だ。このほか、アセモグル氏はマクロとミクロ経済学に関する共著の邦訳もある。
受賞を受けて、品薄となった書店もある。ジュンク堂書店池袋本店(東京都豊島区)では、14日の受賞発表直後から特設コーナーを設置したが、既にほぼ完売したという。経済書の担当者は「アセモグルさんらの本は元々売れていたが、受賞をきっかけにまた盛り上がるのではないか」と期待する。
早川書房には書店などからの問い合わせが相次いでおり、出版している3作品を重版する予定。担当編集者は「話題になって大変ありがたい。経済だけでなく、社会制度や歴史なども研究しており、幅広い読者から関心を持ってもらえるだろう」と話した。【古川宗】
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