「パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ」の1場面(C)DACP-Kiss Films-Atelier de Production-France 2 Cinéma

 児童養護施設で子ども時代を過ごし、「生きるため」に菓子づくりの世界に入った仏のパティシエ(菓子職人)、ヤジッド・イシュムラエンさん(32)の半生を描いた仏映画「パリ・ブレスト 夢をかなえたスイーツ」(セバスチャン・テュラール監督)がこの春公開され、東京の新宿武蔵野館など各地で上映されている。来日したイシュムラエンさんは「最高のパティシエになるという夢が自分を支えた」と語り、「試練は自分が成長できるチャンスでもある」と力を込めた。

 モロッコ出身の両親を持ち、フランスで生まれた。自身は父の顔を知らず、母はアルコール依存症に陥った。フォスターファミリー(里親家族)に預けられ、8歳から児童養護施設で暮らした。「休日はフォスターファミリーの家に遊びに行き、手づくりのケーキや菓子を食べるのが楽しみだった」という。「パティシエになりたい」という気持ちが募り、14歳で施設を出てパリで働き始めた。有名店を渡り歩いて著名なパティシエやシェフのもとで修業を重ね、そして出場した「ジェラート・ワールドカップ」(冷菓世界選手権)。22歳のイシュムラエンさんが率いたチームが世界チャンピオンに選ばれた。映画のクライマックスは、そのコンテストのシーンだ。

自身の半生が映画化された、ヤジッド・イシュムラエンさん=明珍美紀撮影

 仏で2016年に刊行された自伝が話題を呼び、映画化につながった。今は実業家でもあるイシュムラエンさんは「僕は貧困や暴力など過酷な現実を見てきた。社会にもまれて学んだことは、謙虚さを失わないこと。子どもたちには、夢を諦めないでほしいと伝えたい」と話していた。

 上映館など詳細は「パリ・ブレスト」の公式ホームページ。【明珍美紀】

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