藤井聡太名人(21)に豊島将之九段(33)が挑戦する第82期名人戦七番勝負(毎日新聞社、朝日新聞社主催、大和証券グループ協賛、千葉県成田市など地元主催)第2局2日目の24日、プロ棋士による大盤解説会が同市内で開かれた。約200人のファンが耳を傾けながら、勝負の行方を見守った。
大盤解説会は、対局会場の成田山新勝寺に近いJR成田駅前のホールで開催。木村一基九段が聞き手の小高佐季子・女流初段を相手に、対局の流れを説明した。木村九段は考えられるさまざまな選択肢を示しながら、両者の次の一手と形勢を予測。長考に入った場面では「自分の読み筋と違う手を指された時は相手がミスをしたと思いたいもの。喜んでぱっと指してしまいたくなるが、やはり裏があったということがよくある。意外な手を指された時ほど慎重に考えるべきで、これは正にその局面」などと経験を交えながら解説した。
旭市の熱田隆さん(70)は「藤井名人の天才的な発想が好きで応援している。これまで藤井名人のタイトル戦はネットで見ていたが、地元での名人戦で初めてタイトル戦の大盤解説会に来ることができ、うれしい。木村九段の解説は聞いていて楽しい」と話した。
東京都世田谷区のお笑い芸人、寺内雄生さん(36)は「午前中には形勢が藤井名人に傾いていたが、夕方には豊島九段も盛り返してきて、ワクワクしてます。一局でも多く名人戦を見たいので、第2局は豊島九段に勝ってもらいたい。将棋を集中して見るならネットの方がいいかもしれないけど、大盤解説会では、応援している木村九段の解説を聞くことができ、プロ棋士のサインなどが当たる『次の一手クイズ』もあって楽しく、来て良かった」と笑顔だった。
藤井名人のファンで、将棋を始めて約7年の東京都文京区、桑原知子さん(84)は「初日も動画で大盤解説を見ていたが、会場で参加したのは初めて。木村九段はおしゃべりが上手で面白く、勉強になった。聞いているだけで棋力が上がる気がする」と喜んだ。
封じ手開封を観戦
24日朝、対局会場では、立会人の森内俊之九段が封じ手を開封。抽選で選ばれた10人が、間近で見た。
成田市の小学6年、前田大和(やまと)さんは「藤井名人も駒を滑らせたりしていて、名人でも緊張するんだなと思った」と興奮気味。父や祖父の影響で約3年前から将棋に興味を持つようになったが「さらに好きになった。ちゃんと習いたい」と目を輝かせた。
同じく市内から参加した会社員の川瀬士郎さん(61)は「地元で対局をこんなに間近で見ることができるとは。会場の独特の雰囲気と、藤井名人の凜としたたたずまいは一生忘れない」と話した。長崎県大村市から駆け付けた藤井裕美さん(54)は「張り詰めた雰囲気で棋士が体力、気力の限りを尽くして戦っているのがよく分かった。どちらにも頑張ってほしい」と話した。
おやつ、勝負めし
この日も両棋士は激闘の合間に地元のスイーツや食事を味わった。藤井名人は午前に「やきだんご」(後藤だんご屋)を、午後は「ぴーなっつ最中」(なごみの米屋)を注文。豊島九段はこの日もおやつは午後のみで、やきだんごをリクエストした。昼食の「勝負めし」は藤井名人が「成田産さつまいもを使った『上天重』」、豊島九段は「成田名物『上うな重』」だった。【合田月美、松尾知典】
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