1人暮らしを始めたあの日、ついに手にした「自由」の素晴らしさに胸を躍らせて以来、私は抜け出せない。

 だから、シャーリイ・ジャクスンという女性作家が描く夫婦や家族などの共同体が漂わせる無言の抑圧が、人々の自由や思考を奪っていく様子に、強烈な嫌悪感を覚える。しかし、シャーリイ自身は抑圧の中にあえて身を置くことで、抑圧の姿を彼女だけの表現で描き、多くの名作を生み出し続けたようだ。

 1人の女子大生の失踪事件に着想を得て、生み出されたシャーリイ・ジャクスンの長編小説「絞首人」。映画は、抑圧的な夫との特異な夫婦生活を送るシャーリイが、いかに「絞首人」を書き上げたかを、フィクションを交えて描いていく。

 彼女に創造のヒントを与えたのは、夫が無断で家に住まわせた居候の若夫婦だった。

(桜坂劇場・下地久美子)

◇桜坂劇場で上映中

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