去年10月、県の無形文化財で刀匠の松葉一路さんの刀を作る鍛錬場が火災で全焼しました。弟子と共に再起に向けて取り組む松葉さんの思いを取材しました。
去年10月、刀匠の松葉一路さんは、日向市平岩の自宅と鍛錬場を火災で失いました。
(刀匠 松葉一路さん)
「とにかく仕事して仕事してという状況をずっと続けてきたのに、ぱったり仕事しない今の感じはもう何とも言えない。」
松葉さんは、日向市で1989年から刀を作り続け、日本美術刀剣保存協会で無鑑査認定されるなど国の内外で活躍。おととしには、県の無形文化財に指定されました。
その後、病気で歩けなくなっていましたが、ようやく回復した矢先に火災に見舞われました。
鍛錬場を失い、半年たった今も、刀を作ることができません。
火災は、松葉さんの弟子で、これから刀匠をめざし、承認試験を受ける予定の森本成美さんにも大きな影響を与えました。
(刀匠 松葉一路さん)
「小さな工房ですね、小さな鍛冶場。森本が試験を受けるのに、腕がなまりますから、ちょっとでも練習できるようにこさえた。刀を作ることはぜんぜんできません。」
松葉さんは、これまでの鍛錬場が津波の浸水地域にあったことから、日之影町にある森本さんの実家の敷地に、新たな鍛錬場を建設することにしました。
(刀匠 松葉一路さん)
「そもそも日本刀の刃文というのは、山並みをうつしているんですよね。こういう風景を見ると、制作意欲がいやがうえにも増しますね。」
しかし、鍛錬場の建設には約4000万円が必要で、松葉さんと森本さんは保険や国の補助金の手続きなど奔走。地域の人たちも土地を無償で提供するなど支援してくれています。
中には、クラウドファンディングで支援してくれる人も…。
松葉さんの刀を愛用する居合の指導者がプロジェクトを立ち上げ、刀づくりに欠かせない松炭の購入費用を集めています。
(刀匠 松葉一路さん)
「本当にありがたいですね。これからしっかりいい刀を作っていって、技術・知識・その他をしっかり次の世代に受け継いでいくのが皆さんのご厚意に応える道と思っています。」
この日は、森本さんの試験に向け、仮設の工房で日本刀の形に整える作業を行いました。
試験では、8日間で「鎬造り脇差」を一振り作ります。強靭な体力と精神力が求めらます。
(刀匠 松葉一路さん)
「簡単じゃないので、ほんと心配ですね。技術的には問題はないんですけど。無の境地です。無の境地。」
(弟子 森本成美さん)
「そっちの方がかえって、緊張しなくていいかもしれないです。やっぱり先生みたいな無鑑査を目指しているんですけど、賞を取っていけるような刀がつくれたらと思っています。」
松葉さんは、刀鍛冶は性別に関係なく、美的な感性が大事だと話します。
(刀匠 松葉一路さん)
「武器というのものを美の世界まで、美しさにまで昇華させたのはもう唯一日本刀だけですから、日本人としてのアイデンティティそのものは日本刀だと私は信じているわけです。これを次の世代に絶対引き継いでいってもらいたい。森本をはじめ、弟子が何人も他にいます。みんな頑張ってもらいたいですね。」
伝統的な技術や精神を後世に残すため、松葉さんは弟子とともに再起を図ります。
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