名人戦第2局で藤井聡太名人が父親の形見の駒を並べるのを見守る小泉一成・成田市長=千葉県成田市の成田山新勝寺で2024年4月23日午前8時54分、鈴木泰広撮影

 藤井聡太名人(21)に豊島将之九段(33)が挑む第82期名人戦七番勝負(毎日新聞社、朝日新聞社主催、大和証券グループ協賛、千葉県成田市など地元主催)。23日に成田市の成田山新勝寺で始まった第2局で使われている駒は、小泉一成市長(67)の父親の形見だ。名人戦が20年前に成田で初めて開催された時からの悲願が「三度目の正直」で実現した。

 新勝寺の参道で旅館を営んでいた市長の父国蔵(くにぞう)さんは、大の将棋好きだった。故松田茂役九段の道場で学び、仲間を集めては今回立会人を務める森内俊之九段(53)を招いて対局指導も受けていた。

 そんな国蔵さんが生前、金庫の奥にしまっていたのが、名駒師・宮松影水作の「虎斑(とらふ)」の駒。虎のような縞(しま)模様が美しく、年月を経て飴(あめ)に変化している。小泉市長は「父は使わせてくれず、いくらで手に入れたかも教えてくれなかった。高くて母に知られると怒られると思ったんでしょう」と笑う。関係者によると「車が買えるほどの価値がある逸品」という。

名人戦第2局で使われている「虎斑(とらふ)」の将棋駒。小泉一成・成田市長の父親の形見だ=千葉県成田市の成田山新勝寺で2024年4月23日午前8時17分、鈴木泰広撮影

 名人戦の成田開催は市制50周年の節目だった2004年、60周年の14年に次いで、70周年の今回が3回目。羽生善治名人に森内王将が挑んだ04年、森内名人に羽生王位が挑戦した14年にもこの駒が候補に挙がった。

 しかし、模様が鮮やかすぎて「目が疲れる」「集中しづらい」との理由で見送られた。一方で2回とも国蔵さんの将棋盤が使われ、2人がサインをして、今は市内の成田国際文化会館に飾られている。

 今回、父親が大切にしていた駒が使われることになり、念願がかなった小泉市長は、23日午前9時、新勝寺で対局の初手を見守った。「大変光栄なこと。父親もきっと感激していると思う」。万感の思いを口にし、歴史に残る名勝負を期待した。【鈴木泰広、合田月美】

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