特集は祖父と孫娘の二重奏です。片目が見えないハンディキャップを抱える幼い孫娘に、「支えになれば」とギターを教えた祖父。15年が経ち、孫娘は今、音楽療法士を目指しています。2人が奏でる音色をお聞きください。


■すごく苦しい時が…

♪「見上げてごらん夜の星を」

会場を包むギターの音色。

8月31日、長野県飯綱町で開かれた「グランパと孫娘のギターコンサート」です。

演奏するのは、千曲市の越敬一さん(73)と孫の青木雪音さん(18)。雪音さんは右目が見えません。

青木雪音さん:
「自分も病気があって、人と比べてしまう時期があって、すごく苦しい時だったんですけど、それでも私はギターがあるから大丈夫だと思える。そういうきっかけがクラシックギターだったので」

雪音さんにギターを教えたのは敬一さん。2人が奏でる音色にはギターを通じて、支え合い、励まし合ってきた祖父と孫娘の15年が詰まっています。


8月23日、千曲市・越さんの自宅―。

コンサートの1週間前、2人は練習に励んでいました。


敬一さん:
「1カッコから戻って」

雪音さん:
「あー、そうだ、戻る?」

敬一さん:
「うん」

♪「見上げてごらん夜の星を」

敬一さんは市役所の元職員。クラシックギターの魅力を広めようと、2010年に退職し、自宅にギター教室を開きました。

現在の生徒は50人ほど、雪音さんもその一人ですが教室を開く前からの生徒です。


■励まし合ってきた祖父と孫娘の15年

雪音さんは生まれつき、右目が見えません。敬一さんは3歳になった雪音さんにギターを教え始めました。

祖父・越敬一さん:
「なんとか落ち込まないで前向きに生きていってほしいなと。その支えにギターがなればいいなと思って、楽しく続けられれば、何かそれが自信になって将来的に明るく前向きに生きていかれるようになればいいかなと」

青木雪音さん:
「物心ついたときにはギターがあったという感じだったので、覚えてないな(笑)」


■ギターが心の支えに

雪音さんがメロディーを弾き、敬一さんが伴奏。雪音さんはギターの楽しさ、デュオの面白さを知ります。

雪音さん:
「小さいときは二重奏とかでギターを楽しんでいたので、ギターの楽しさを教えてもらって楽しく弾いていたって感じです」

■音楽療法士を目指し

ピアノや吹奏楽にも親しんできた雪音さん。敬一さんが思った通り音楽、特にギターは雪音さんの心の支えになってきました。

この春、高校を卒業し今は専門学校に通い音楽療法士を目指しています。

青木雪音さん:
「他の人と違うんだって思って、すごくつらい時期があったんですけど、そういう時も音楽とかギターにすごく支えられてきて、そういう経験もあったから、私も困っている人とかすごく苦しい思いをしている人に音楽の力で何かサポートできないかなと思って、介護施設、養護学校、病院とか、障害や病気を持っている人だったり、子どもやお年寄りまで音楽を身近に楽しんでもらうという仕事です」


■祖父と孫娘の二重奏

大勢の前で演奏する度胸をつけようと2人は2023年秋からデュオの演奏会を開催。

さらにー。

雪音さん:
「夜ね、行ったね」

敬一さん:
「行けるなんて夢みたいだね」

2024年3月には2人でスペインを旅行し本場のギターを聴いてきました。

青木雪音さん:
「(ストリートミュージシャンは)日本では弾き語りが多いと思うんですけど、スペインはクラシックギターとかピアノだけだったりとか」

15年、一緒にギターを弾いてきた祖父と孫。仲の良さは演奏にも生かされています。

敬一さん:
「仲は悪くはないです(笑)」

雪音さん:
「悪くはないです(笑)」


■本番前に緊張…

8月31日、本番当日午前10時―。


コンサートの開催は今回の飯綱町で3回目。リハーサルをする2人はー

敬一さん:
「あ、いけね」

雪音さん:
「(笑)やばいよそれ、本番でやったら」

青木雪音さん:
「緊張してます。でも楽しみたいと思います」


会場は満席に。

この日は雪音さんの両親も駆けつけました。


■コンサート本番

いよいよ本番です。

越敬一さん:
「初々しい演奏と、私のさび付きかけた演奏で楽しくきょうはギターの魅力を味わってもられえば」

♪「見上げてごらん夜の星を」

緊張していた雪音さんは演奏が始まると表情が一変、曲の世界に入り込みます。


青木雪音さん:
「タレガ自身もすごく大事にしていた曲なのではないかと私的には思っています。その曲を演奏します」

それぞれのソロ曲も披露―。

♪「アラビア風奇想曲」/フランシスコ・タレガ

「アラビア風奇想曲」は度々コンクールでも披露してきた思い入れのある曲です。


♪「残酷な天使のテーゼ」

観客(長野市から):
「すごく上手でした。女性なので音も本当に繊細できれいな音色だった」
「息がぴったり合っていて、いろんなデュオ見て聴いてますけど、この2人でしか出せない音なんだろうなとつくづく思いました」


2時間に及んだコンサートが終わりました。

雪音さん:
「先生!」

専門学校の先生:
「すごくよかったー」

雪音さんが通う専門学校の先生:
「感動しております、音色もすてきで本当に心のこもった演奏だったなと思います。素晴らしい音楽療法士になれるんじゃないかと思っています」


両親はー。

父・博幸さん:
「学校の課題とかあるなかで毎日コツコツと練習している姿を見ていたので、きょうは無事終わって安心してます。演奏は120点ですかね!」

母・まゆみさん:
「自信になってくれればいいかなということでギターを始めたんですけど、まさかこんなふうにおじいちゃんとコンサートできるようになる日がくるなんて思ってなかった。こんなにうれしいことはないなと思って、感謝しています」


■祖父と孫娘のデュオはこれからも

♪「愛の花」

2人で息を合わせて15年。祖父と孫娘のデュオはこれからも続きます。

祖父・越敬一さん:
「さらに究めて高みを目指していって、音楽療法士としての仕事につながっていくと思うで頑張ってほしい」

青木雪音さん:
「祖父のことはすごい尊敬していて、先生と生徒という立場でもありますし、おじいちゃんと孫という立場でもあるんですけど、ずっと一緒に演奏していきたいなという思いはすごくあります」

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