記念公演「富貴楼お倉~花のように、風のように、海のように~横濱から日本を動かした女」に臨む五大路子さん=横浜市南区で2024年8月27日、矢野大輝撮影

 女優・五大路子さん(71)が座長を務め、横浜を拠点に活動を続ける劇団・横浜夢座が9月13~16日、「富貴楼お倉~花のように、風のように、海のように~横濱から日本を動かした女」をKAAT神奈川芸術劇場(横浜市中区山下町)で公演する。今年、舞台活動50周年を迎えた五大さん。「開港した横浜でお倉が描いた夢を想像しながら見てもらえたらうれしい」と意気込む。【矢野大輝】

 五大さん演じる主人公・お倉は、横浜開港直後の明治時代に名をはせた横浜の高級料亭「富貴楼」の名物女将(おかみ)。気立ての良さと端麗な顔立ちで名の売れた女性だ。当時の富貴楼の近くには川が流れ、船で来たり、東京から汽車で駆けつけたりする客でにぎわったという。伊藤博文や大隈重信、岩崎弥太郎ら日本を動かす実力者が集う場所でもあった。

 大物政治家や経済人とも親交を深めたお倉は商売の才覚に加え、人と人との縁を結ぶ力に長けていたという。「政治家同士がいがみあっていても二人が力を合わせられるように陰で尽力したと思う。日本の命運を握った人たちを、お倉は微力ながら裏で支えていたはずだ」と五大さん。作品ではお倉が力強く生きる姿をフィクションを交えて描き出している。

けいこに励む五大路子さん(左)=横浜市南区で2024年8月27日、矢野大輝撮影

 五大さんはこれまで、自ら立ち上げた横浜夢座で横浜市内の学校を回り、横浜大空襲をテーマにした朗読劇「真昼の夕焼け」を公演。一人芝居「横浜ローザ」を毎年行い、戦争に翻弄(ほんろう)された横浜の女性を演じ続けている。精力的な活動の背景には「横浜から演劇を世界に発信したい」との強い思いがある。横浜夢座も誕生から今年、25周年を迎えた。

 五大さんが初めてお倉を演じたのは2009年。開港150周年の音楽劇だった。以前から開港当初の資料を読んでお倉の存在は知っており「お倉という人物に焦点を当てた公演をしてみたかった」と振り返る。今回は開港165周年の節目での公演。「お倉はどんな人物だったのか、開港した横浜でどんな夢を描いたのか。史実に残る部分は多くはないが、お倉の功績をテーマにして届けたいと思った」と語る。

 なぜお倉に惹(ひ)かれたのか。五大さんは「お倉は大きなことは成し遂げていないが、横浜から日本の将来を明るくしたいという自分の夢を横浜で追い続けていた」と目を輝かせ「お倉のように、大好きな横浜から夢や思いを発信していきたい」と意気込む。

 公演は9月13日、15日、16日は午後2時開演。14日は午後1時、午後6時開演。一般前売6500円(当日7000円)、学生前売3000円(当日3500円)。問い合わせはチケットかながわ(0570・015・415)まで。

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