2023年日本民間放送連盟賞テレビ・グランプリ、ニューヨークフェスティバル金賞など、数々の賞を受賞したドキュメンタリー映画「イーちゃんの白い杖 特別編」の自主上映会が8月24日(土)、静岡県伊豆の国市の韮山時代劇場で開かれ、市民およそ200人が訪れました。
上映会を企画したのは、伊豆の国市や伊豆市を拠点に特別支援学校の児童生徒や市民の手形・足形を集めて絵画を製作している「IZU(いず)ハンドスタンプアートプロジェクト」です。このプロジェクトは、障がいを持つ子の母親や、高齢者を介護している人たちが中心となって活動していて、病気や障がいの有無に関係なく、誰もが共に笑顔で暮らせる街を目指しています。
選んだ映画はテレビ静岡制作「イーちゃんの白い杖 特別編」。(2024年5月10日公開・108分)
この映画は静岡県焼津市に住む目の見えない少女・イーちゃんこと小長谷唯織(こながや・いおり)さんが、いじめや夢の挫折、解雇など困難にぶつかりながらも、重度の障がいを持って生まれた2歳下の弟・息吹(いぶき)さんや家族に支えられ、自立する姿を25年にわたり描いています。
24日の自主上映会では、映画上映のあと、主人公イーちゃん(34歳)と弟・息吹君(32歳)、父・卓也さん、母・和美さん、映画監督の橋本真理子さん、音楽を担当した川口カズヒロさんが舞台挨拶し、それぞれの思いを語ったり、主題歌「I―あい―」を披露したりして会場をひとつにしました。
主人公イーちゃんは「小学校の頃はテレビのお姉さんが自宅や学校に来てくれる!と取材がとても嬉しかったんですが、自分が悩み苦しんでいた中学高校時代は撮影されるのが嫌でした。橋本さん(監督)のことは好きだけど、カメラを回す橋本さんは嫌いで…言い合いになったこともありました。でもいまは、私を見捨てず取材してくれたことを感謝しています。この映画を通して障がいがあろうがなかろうが誰にも生まれてきた意味があるということを多くの人に知ってもらいたいです。そしてこの映画を通して、私はみんなを笑顔にするために生まれたんだと実感しました」と思いを伝えました。
母・和美さんは言います。「重い障がいを持って生まれた息吹。この子を看取るため焼津の自宅を建てました。25年ローンを払い終えるまで息吹は生きた。本当に強い子です。いまは唯織夫婦を含め6人で忙しく、とっても楽しく暮らしていますよ」と。
そして橋本監督は「障がい者が主人公の映画というとお涙頂戴の映画だろう、つらくなってしまうから見たくないと敬遠されがちですが、イーちゃんという女性の成長譚として見て感じてもらいたいと制作しました。きっかけは2016年に発生した神奈川県相模原市の重度障がい者を狙った殺傷事件です。障がいをもつ人も生きる権利がある。命の尊さを多くの人に伝えなければと映画化に踏み切りました。誰もが年をとれば目も悪くなり、腰も痛くなり、障がい者になると私は思います。悩みは健常者も障がい者も同じです。このような自主上映会でイーちゃん家族と観客がふれあう。これこそが健常者と障がい者という区別をなくす一歩だと思います」と、映画化の理由、舞台挨拶の意味を伝えました。
映画を見た人:
障がい者の暗さや大変さがメインの映画かと思っていたら全然違ってすごく良かったです。姉弟の絆の強さ、お互いがすごく思いあって仲良しなのが印象的でいいなぁと思いました。イーちゃんも明るいし素敵な旦那さんに巡り会えて良かったですね
映画を見た人:
素敵な時間をありがとうございました。イーちゃん一家は素晴らしい家族ですね。もっとたくさんの若者たちもご一緒できるとよかったです。生きていくエネルギーを教えてもらいました。家族の力を確かめることも教えてもらいました。それぞれが惜しみなく愛を注ぐなか、土台になっているのはパパかな。その上に大黒柱のイブちゃんが立っている感がしました
映画を見た人:
あんなに泣いたのは久しぶりです。「イブちゃん、姉ちゃん」という姉弟の会話を思い出すだけで目がうるうるします。心の錆が一緒に落ちて心が綺麗に優しくなった気がします。もっともっと、たくさんの方に観てもらいたいです
24日の自主上映会では、訪れた人たち、そしてイーちゃん家族もハンドスタンプに参加。
完成したスタンプアート「幸せの木」が会場に大きな花を咲かせていました。
IZUハンドスタンプアートプロジェクト
小嶋友子 代表:
イーちゃんの白い杖を制作した橋本監督と同じように私も相模原の事件を受け、2018年にこのプロジェクトを立ち上げました。集めた手形は1万5000個に上ります。障がい者は不便なことはあっても決して不幸ではありません。障がいがある人もない人も、誰もが分け隔てなくその存在を認められ、受け入れられ、大切にされること。手形の数だけ愛がある、誰もが幸せに暮らせるまちを目指して、これからも活動していきます
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