100年以上続く仙台伝統の影絵劇が存続の岐路に立っています。理由はメンバーの高齢化です。こうした中、影絵劇を残したいと活動する1人の中学生がいます。「1人でも多く仲間を増やしたい」自分ができることを模索しています。
光と影のコントラストで見ている人を不思議な物語の世界にいざなう影絵劇。令和の時代でもその魅力は色あせません。
この影絵劇を大正時代から続けてきたのが「おてんとさんの会」です。1910年、日本初の童謡専門誌を創刊した「おてんとさん社」をルーツに持つこちらの団体。仙台の児童文化を長年、支え続けてきましたが、メンバーの高齢化により設立100周年にあたるおととし、活動を休止し以降は有志が中心となって影絵劇の公演を続けてきました。
「おてんとさんの会」代表 安永教夫さん(84)
「(最近も)2人メンバーが抜けたんですよ。やっぱり年齢です」
そんな中で、期待を寄せられる存在がいます。加藤光太朗さん、中学2年生です。
加藤光太朗さん(14)
「(影絵の魅力は)みんなで協力して一つ一つ作っていくところです。やっぱり文化、こういうことを昔からやっていたんだよっていうのが伝わればいいと思います」
父の理さんが「おてんとさんの会」のメンバーだったこともあり、幼い頃から影絵劇が身近にあった光太朗さん。去年、伝統を守りたいとメンバーに加わりました。3日後に迫った公演でも6つの演目のうち4つで重要な役割を担うことになりすでに中心的な存在となっています。そして、今年はもう一つ大きな目標があります。
加藤光太朗さん(14)
「若い人がもうちょっと入ってくれたらもっといいかなって」
伝統を受け継ぐ仲間を増やすことです。メンバーとの打ち合わせの結果、本番前に光太朗さんが観客に呼び掛けることになりました。
人前で話すのは苦手という光太朗さん。これからも影絵劇を続けるため、挑戦することにしました。
加藤光太朗さん(14)
「3人くらい新しい人が入ってくれたら満足」
光太朗さんは陸上部に所属し、勉強も忙しいといいますが、影絵劇の研究にも余念がありません。60種類以上の演目があるとされる「おてんとさんの会」の影絵。
加藤光太朗さん(14)
Qどれが一番好き?「証城寺のたぬきばやし!」
リズミカルな音楽が特徴の「証城寺の狸ばやし」。「月がきれいで、たぬきの動きも面白い」といいます。
先日、光太朗さんの元に「おてんとさんの会」を設立した詩人、スズキヘキの長男から一通の手紙が届きました。そこには「光太朗さんが伝統を引き継いでくださればこんなに良いことはありません。影絵の期待の星は光太朗さんです」と書かれていました。
加藤光太朗さん(14)
「うれしいけどプレッシャーがあります。『おてんとさん』に人が入ってもっと楽しい会にしていきたいです」
公演当日。本番を前に最後のリハーサルが行われました。
加藤光太朗さん(14)
「結構緊張しています。最初に読んだりするので、だからそういう時に言葉間違ったりしないか緊張します」
会場は満席となりました。光太朗さんのあいさつで公演が始まります。
「僕たち、おてんとさん影絵では仲間を募集しています。小学生以上ならどなたでも大歓迎です。それでは音楽やシナリオに合わせて動かしていく人形の動きや光が生み出す幻想的な影絵劇をどうぞお楽しみください」
大役を果たした光太朗さん。いよいよ練習を重ねた影絵劇です。
幼い子供が竹ぼうきを振りながら蛍を探す様子を描いた「ほたる」という演目。キラキラ光る蛍の光は、光太朗さんが小さいライトで再現しています。言葉を交わさずともあうんの呼吸。
加藤光太朗さん(14)
「みんなが面白そうだなって思ってくれるような、やりたいなって思ってくれるような感じで演じたいです」
まるで命を吹き込まれたかのように、影絵が幻想的な世界を作り出します。影絵劇もミスなく最後までやりきることができました。
観劇した男性
「昔から続いている影絵、いろんな工夫があって楽しかったです。ぜひこれがずっと続いてくださるといいかなと思いました」
観劇した10代女性
「きれいだったと思います。見たことがなくてすごく好きでした」
加藤光太朗さん(14)
「いろんな人が見てくれたし、勧誘の紙も配ったので人が入ってくれたらうれしいなと思います。プレッシャーあるし自分1人だったら終わるなと思うので頑張っていきたい」
伝統の影絵劇を支える「期待の星」が、未来を明るく照らしています。
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