読まなくなった本を、新聞や雑誌、段ボールなどと一緒に古紙回収に出す人も多いと思いますが、再利用のための資源にするべきか、まだ読みたい誰かのために古本にするべきか…その“曖昧さ”に着目し、古紙回収業者で集められた本を「貸し出す」取り組みが、先日、福井駅で行われました。
  
福井駅構内の一角で開かれた本の貸し出しイベント。その名も「曖昧図書館」です。会場には絵本や小説、ビジネス書、歴史書など様々なジャンルの本がずらりと並びました。
  
この取り組みは、古紙回収など資源を有効活用する取り組みを身近に感じてもらおうと、県内外に住む社会人5人でつくるグループ「social dig(ソーシャル・ディグ)」が企画しました。
   
4年前からこれまでに古紙回収業者に寄せられた8000冊以上の中から、幅広いジャンルの本3000冊をチョイスし、今回、社会実験として2日間限りで図書館を開きました。
    
会場に並んだ本は、古本として再び活用されるのか?それとも資源として再利用されるのか?その曖昧さを楽しむ図書館で、返却の場所や期限はありません。その後、どうなるか?「本の運命は借りる人次第」というわけです。
  
この日は、朝から大勢の人たちが足を止めて思い思いに本を手に取っていました。ある人は「懐かしい感じ。今まで自分や家族が読んだ本と同じものがここにあって、懐かしい。色々なジャンルの本があるので、今まで読んだことがないような本にも目がいくので良かった」と話し、子育て世代の人は「本は結構高いし、いっぱい読んで(子供に)ちぎられてしまう。新しい本を買うのも躊躇(ちゅうちょ)してしまうので、こうやって古本を気軽に持って帰れたら有難い」「(誰かが)小さいころに読んだ本を受け継いで読ませてもらえるのは、すごく有難くてうれしい」と話していました。
 
15冊を手に入れたという人は「歴史関係が多い。私も読んだら、この本をどこかへ寄付したいと思う」と話していました。
 
企画した「ソーシャル・ディグ」の中神遼さんは「親子や友達同士で本を選ぶなど、コミュニケーションの一つとして、本が関係性を作っているところも見られて良かった。ゆくゆくは、常設の図書館を古紙回収業者のところに設置できれば一番いいと思っている」と話します。
  
団体では、社会実験で本への反応や需要を調べた結果、かなり好評で、この取り組みを楽しむ人が多いことがわかったということです。現在、本の回収ボックスは、福井市の古紙回収業者「増田喜」に常設していますが、ゆくゆくは、ここに図書館を常設し、それをきっかけに古紙回収に足を運ぶ人を増やしたいと話しています。

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